食べ物を粗末にするな、と幼児を叱るのは簡単です。
が、モノが溢れる現代において、心から納得してもらうのは難題。
社会の仕組みを知らない子供たちにとっては、現実感のない話です。
子育て中の親は、この難題にどう取り組めばいいのでしょうか。
娘は納得しないだろうとわかるので違和感がある
4歳の娘が、よく、食べ物で遊びます。
分別がつくようになれば遊ばなくなるだろうし、食べ物を粗末にする行動自体に悩んでいるわけではありあせん。
が、「食べ物で遊ばない!」と叱る自分に、何とも言えない違和感を覚えます。
僕自身は、戦争直後の貧困を経験している祖父母に、「米を最後の一粒まで食べなさい」と言われて育っているので、娘が食べ物で遊んでいると、ほとんど反射的に「もったいない!」と感じます。
贅沢し放題の家庭でもなかったので、(今は昭和初期じゃないんだよ!)とは心の底で思いつつも、食べ物の大切さを想像することは、まだできた世代なんだと思います。
でも、娘にとっては、平成20年代が人生のスタート。
妻の実家で祖父と同居している影響もあって、物にはまったく不自由していません。
誕生日やクリスマスには山ほどプレゼントをもらい、洋服は季節ごとに新しいものが着られます。
娘は食が細いのもあって、残すこともしょっちゅうです(お皿に盛っている量は、1歳半の息子よりも少ないのに)。
食べ物が余ることこそあれ、足りなくて飢える事態なんて想像もできないはずです。
だからこそ、食べ物がほこりだらけになっても、もったいないとは感じないんでしょう。
「食べ物を粗末にするな!」と叱るのは簡単です。
が、心から納得してもらうのは難題です。
「食べ物で遊ぶんなら、もうご飯を作ってあげないから」と強く言えば効果はあります。
一方で、娘は理不尽さを感じているはずです。
なんでそんなに怒るのか、と。
だってコンビニに行けば、いつだって溢れるほどおにぎりやお菓子やジュースが売っているんですから。
お金の価値を教えるのと同じ種類の困難さがある
子供に食べ物の大切さを教えるのには、子供にお金の価値を教えるのと同じハードルがあるわけです。
例えば子供がおもちゃを欲しがっても、それがすぐに飽きると知れている、どうでもいいような品なら、「そんなものにお金を使いたくない」と私たち親は感じますよね。
頑張って仕事をして得たお金だからこそです。
でも、“仕事の対価としてのお金”という親の感覚を、幼児に理解してもらうのはほとんど不可能です。
説明だけでは絶対に理解できません。
僕自身を思い返せば、お金の価値を本当の意味で理解できたのは、16歳、17歳になってアルバイトを始めてからです。
水を無駄にするな、電気を消せ、と言われても、理屈ではわかるんだけれど、実感が伴わない。
働くようになって、どうして親がお金をケチるのか、本当の意味で理解できたわけです。
世の中を知らない子供たちにとっては現実感がなくて当然
食べ物の場合、もちろん世界規模で見れば貧困が至るところに存在します。
人口爆発によって食糧危機が訪れるというのも(真剣に検討した経験はありませんが)事実なんでしょう。
農家が一所懸命作ったとか、いつ東日本大震災のような災害に見舞われるかわからないとか、理屈を用意するのは簡単です。
それらは屁理屈ではない真っ当な論理ではあるものの、決定的に現実感がありません。
われわれ大人にとってはまだしも、社会の仕組みを知らない子供たちにとっては、おとぎ話の世界のほうがまだ親しみやすいはずです。
みなさん、どう向き合っていますか?
子育て中のみなさんは、この難題にどう対処しているんでしょうか?
いや、これは本当に、ぜひ色々な意見を聞きたいです。
シンプルな解決策は、環境を変えること。
コンビニもロクにないような田舎に住むなど、物が飽和した状況から抜け出せば、てきめんに変わるはずです。
個人的にはインターネット環境さえあれば仕事できるんですが、ただ妻が実家の自営業の手伝いをしているので、すぐには動けません。
おそらく最適解は、いまは理不尽に感じさせたとしてもしっかり叱り、成長するに従ってきちんと世の中を見せる、ということなのかなと思います。
試行錯誤の連続ですね。