初心者が日帰り富士登山を成功させるために最低限必要な準備リスト15

初心者が夏に日帰りで富士登山を成功させるために、“最低限これだけは絶対に必要”と実感しているものを、すべて紹介します。

 

服装

1. 防水素材のレインウェア上下

富士山頂の気温は、真夏でも5度前後。

基本的な服装は、長袖・長ズボンです。

もちろん登山中は汗をかくので、下着は速乾素材のものが必要です。

問題は雨天時。

富士山は独立峰で、平野の暖かい空気や冷たい空気が斜面を駆け上がるので、天気がコロコロ変わります。

平野が快晴でも富士山にだけは雲がかかっている、あるいは逆に五合目が雨でも、六合目まで登ると綺麗さっぱり晴れているケースもあります。

雨具は絶対に欠かせません。

まず、風が強いので傘は問題外。

ふつうの雨合羽、レインコートもダメです。

なぜなら、汗を外に逃さず、蒸れてしまうから。サランラップを全身に巻いて運動するようなもの。

雨に濡れなくても、汗で、ずぶ濡れになります。

一回ずぶ濡れになってしまうと、登頂を諦めるどころか、救助を呼ばなければいけない危険すら出てきます。

少々値段は高いのですが、レインウェアは必ずゴアテックスほか防水透湿素材のものを用意してください。

完全防水なのに、内側の汗(水分)だけは外に放出するという、軽量かつコンパクトな神素材。

実は日常でも重宝します。

また、当然ながら風を通さないので、山頂付近での防寒着にもできます。

 

2. トレッキングシューズ

富士山は火山なので、(風光明媚な遠景とは裏腹に)溶岩の石や岩・砂礫がメインの山です。

足首まで覆う登山靴でなければ、怪我の可能性が高まります。

また、足首でしっかり固定することで、登りや下りでの足首周りの筋肉をサポートしてくれます。

特に、登山に慣れていない人の足腰の弱さ、脚力不足等を補ってくれます。

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富士山の下山道の須走ルートと御殿場ルートには「砂走り」という箇所もあるのですが、ここで一気に駆け下りられるのは、登山靴が足を守り、サポートしてくれるからです。

 

3. 丈夫で防風性の高いパンツ(ズボン)

富士山は、吹きさらしの強風であるケースが多い山です。

平地が30度以上にもなる夏には躊躇してしまいがちですが、ズボンは風を通しにくい、中厚手の素材を選ぶべきです。

繰り返しますが山頂の気温は5度前後です。

また、バランスを崩して転倒したり、溶岩の岩のうえに座ったりするケースも考えられるので、丈夫な素材のものを選んでください。

トレッキング用パンツとして売っているものが無難です。

 

4. サングラス・帽子

富士山は標高が高く、森林限界を越えると樹木も一切ないため、紫外線が強烈です。

サングラスなしでは目を痛めます。

日焼けが気になる方は、もちろん日焼け止めもあったほうがいいです。

サングラスの効果をしっかり発揮するためには、ツバのある帽子も必要です。

帽子は頭皮の日焼け防止にもなりますし、強風時の防寒の意味でも重宝します。

 

5. トレッキンググローブ

富士山の登山道には、這って登るような岩場が点在します。

必ず手を使うことになるため、丈夫なグローブが必要です。

また、バランスを崩して手をつくケースも想像しておいていい範囲です。

思わぬ形で手をつくと、手を切ったりしかねません。

汗をかくので、できれば速乾素材のものがいいです。

僕はこれを買って富士山で使いました。文句なしの使用感でした。

 

6. 胸と腰で固定できるリュックサック

リュックサックは、ただ背負うだけでなく、胸と腰で固定できるものが必要です。

岩場など段差を登り降りする際に、ズレたり、ブレたりすると、身体に余計な負担がかかります。

飲料が入るとかなり重くなるので、ちゃんと身体に固定されていないと、バランスを崩して転倒する要因にもなりかねません。

容量は30L程度あれば充分です。

また、濡れたら困るものを持って行く場合は(私の場合はデジタル一眼レフカメラ)、そのものをビニール袋に入れたうえで、レインカバーをしましょう。

付属していない場合、別売りもあります。

 

食料

7. 水1リットル

標高が高い富士山では、気温が低く、それほど大量の汗はかきません。

私の場合、登りで500mlペットボトル1本、下りでペットボトル半分くらい飲みました。

思うようにペースが上がらなかったり、いざという事態に陥ったりしたときのために、余裕を持って1.5Lほど持って行けば、問題ありません。

少しでも減らしたい場合は1L程度に減らし、山小屋で調達する方法もあります。

ただし、ペットボトル1本300円以上します。

 

8. おにぎりなど主食2食分

初心者の富士登山は、(吉田ルート、須走ルートの場合)登り6時間+下り3時間=9時間前後はかかります。

最低でも2食分の食料は必要です。

ちなみに妻と須走ルートを登ったときは、往復14時間かかりました。

最悪の場合は山小屋のお世話になることができますが、余裕を持って準備してください。

かさばらず、手軽に食べられる、おにぎり等が候補になります。

タッパーなど硬い素材のランチボックスに入れていくと、食べ物が潰れずに済みます。

 

9. 甘いもの、酸っぱいもの、携帯食料

疲労の蓄積した身体には、糖分やクエン酸&ビタミンCが染み渡ります。

個人的には、スニッカーズのうまさが筆舌に尽くしがたいところです。

飴やキャラメルなども、歩きながら食べられるのでいいですね。

また、カロリーメイトなどの携帯食料を持っておくと、ペースがあがらず時間がかかり、食料が尽きる事態になったときに安心です。

 

その他、事前準備等あれこれ

10. 懐中電灯・ヘッドライト

先ほど触れましたが、初心者の富士登山はペースが上がらずに、思いのほか長時間かかるケースもあります。

早朝から登ったのに、下山が夜になってしまうケースもあります。

富士山は登山道が整備されているとはいえ、ガードレールが設置されているわけではありません。

懐中電灯は必ず用意してください。

小型なものでOKです。

夜間の登山をする前提なら、両手が空くヘッドライトがいいでしょう。

 

11. ストレッチ

富士山の登山道は、溶岩の岩場地帯や、大きな石がゴロゴロしている砂礫が多く、身体が予想外の動き方をしてしまったり、バランスを崩してしまったりしやすい環境です。

長丁場の登山なので、後半は体力的に厳しくなりますし、高山病で頭痛や目まい、思考力低下などの症状が出る可能性もあります。

ちょっとした弾みで、思わぬ目に遭う可能性があります。

長い登山の中で、単に「注意する」というだけでは片付けられない問題です。

転んだり、無理な体勢になったりしても、いかに被害を最小限に抑えるかを考えるべきだと個人的には考えています。

こういったリスクに対して効果的なのが、柔軟性です。

身体が柔らかければ、たとえ転倒しても大けがをせずに済みます。

少なくとも登山の1週間前から(できれば数ヶ月前から)毎日ストレッチをして、身体の柔軟性を高める努力をしてください。

また、下半身だけでなく、上半身もストレッチしてください。

岩山を這うように登ったり、バランスをとったりと、意外に全身運動です。

 

12. 自分の身体を知るための練習登山

富士山に登る前に、高尾山のような低い山でもいいので、登山の練習をするべきです。

体力的には、1回や2回登山したところで、大して変わりありません。

トレーニングというより、自分の身体を知るための練習登山です。

ゆっくりでいいので休まず登り続ける

第一に、登山のペースを身体で覚えること。

富士山に効率良く登頂するためには、超スローペースでいいので、立ち止まって休まずに登り続ける必要があります(酸素が薄い本八合目以上を除く)。

“ガーッと登って、息を切らせてゼイゼイ休む” を繰り返すより、肩で息をしないで済む程度の自分のペースを見つけて、休まずに登り続けるほうが遙かに速いです(また高山病のリスクも大幅に減ります)。

実際、初心者で7時間、慣れている人で6時間と言われる須走ルートを、初心者の僕が5時間半で登頂できました。

大きく息を吐ききる呼吸法

第二に、高山病とうまく付き合うために、登山の呼吸法を知っておくこと。

普段よりも意識して酸素を多めに身体に取り込み続ける必要があります。

具体的には、大きく息を吸うのではなく、肺をからっぽにするくらいの気持ちで(腹筋まで使って)息を吐き切ります。

息を出し切らないと、いくら胸に新しい空気を取り入れようとしても、入る場所が無いというわけです。

この呼吸法を意識しながら登ることができれば、高山病のリスクを大幅に減らせます。

実際、5時間半で登頂した際にも、たまに軽い頭痛がした程度で済みました。

身体の限界を認識しておく

第三に、自分の身体の柔軟性や、限界を知っておくこと。

これくらいなら無理できる、これ以上やったらまずい、という境目を知っておかないと、いざというときに大事故に繋がります。

僕の2回目の富士登山は2013年7月2日でしたが、これは6年ぶりでした。

さすがに自分の身体の状況もわからず、登山経験も忘却の彼方なので、愛鷹山の越前岳で練習登山をしました。目の前に富士山がドンと見えて、ほんの2時間ほどで登れるので、練習にはいい山です。

たった1回ですが、これでいろいろ思い出せたし、必要な装備も最終確認できました。

 

13. トレッキングシューズの試し履き

トレッキングシューズを新しく買ったのなら、絶対に試し履きをしてください。

「自分の足に合っているかどうか」という基本中の基本はもちろんのこと、靴下の厚さひとつで足が痛くなったり痛くならなかったりします。

トレッキングシューズの試し履きの視点からも、練習登山は必須と言えます。

トレッキングシューズは登山において命綱と言っても過言ではありません。

靴ずれなんて絶対にあってはならない事態です。

トレッキングシューズが使えなくなったら、富士山の登頂を諦めるどころか、下山すらできなくなります。

実際に履いて山を登り下りしてみて、自分の登山靴のクセを把握したり、細かな調整をしたりして、本番に備えてください。

 

14. 余裕を持ったスケジュール

登山道にもよりますが、初心者の場合、登山・下山で9時間前後はみる必要があります。

しかもこれは順調に進んだ場合で、高山病の症状が強く出たり、途中で足を痛めたりすれば、12時間以上かかるケースもザラにあります。

こうした可能性を承知のうえで、余裕を持ったスケジュールを組んでください。

まず、充分な睡眠時間を確保すること。寝不足で富士登山なんて、僕だったら怖くて絶対にできません。

簡単に高山病で倒れる自身があります。

次に、標準の所要時間プラス3時間程度は余裕を見てスケジュールを組むこと。

例えば「●時までに戻らないとレンタカーが」というような不安要素は極力排除するべきです。

焦りはトラブルを生みますし、そのために同行者に無理をさせるような事態になっては危険です。

 

15. 九合目でも諦める勇気

これは準備というより、心構えですが。

初心者の登頂成功率は50%程度とも言われているそうです。

富士山は、どんなに綿密かつ入念に準備をしても、悪条件が重なれば登頂に失敗するくらい厳しい環境の山です。

逆に言えば、ズボラな準備でも、運が良ければ登頂できるケースもあるでしょう。

それくらい運に左右されると考えてください。

道中には、遭難者慰霊碑もありました。

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何が起きるかわかりません。

たとえ九合目まで来たとしても、天候が急変したり、高山病の症状が激しくなってしまったり、怪我をしてしまったりしたら、引き返す勇気を持ってください。

忙しくて滅多に挑戦できないのはわかるのですが、甘く見て大事故になってしまったら取り返しが付きませんから。

 

登頂者しか味わえない感動体験!

僕は富士山に登るメリットは、感動体験に尽きると感じています。

世界文化遺産に登録された事実を持ち出すまでもなく、日本一高いですし、日本の象徴のような山なので「一回は登っておきたいよね」という理由はもちろんあるのですが、それ以上に、登頂に成功すると感激します。

なぜなら、

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こんな絶景に出会えるからです。

何時間も掛けて、ときには高山病と付き合いながら、本当に苦労して登った先に出会う大自然の神秘は「人間ってちっぽけだなぁ」という感慨すら抱かせる威力があります。

ただ、その分、ちょっとした条件の悪化で、途端に自然の猛威が牙を剥く、厳しい環境の山でもあります。

大抵の状況には耐えられるように、万全の準備が欠かせません。

しっかり下準備をして、ぜひ富士登山を楽しんでください。