オウンドメディア運営には「目指すべきゴール」の設定が必須|立ち上げ〜成熟期までフェーズ別やるべきこと解説

オウンドメディアは、成熟期を迎え完成形になると、メンテナンスなど最小限の手間だけで、半永久的にCVを生み出し続けてくれる、優れた資産となります。

そのためには、SEOの本質である「コンテンツのクオリティ」から目を背けることはできません。中長期的に検索上位を取れる一流コンテンツを、戦略的に制作していく必要があります。

この完成形(成熟期)を目指すべきゴールに設定できると、各成長フェーズでやるべきことが見えてきます。

解説:寄金 佳一(Webメディアの課題解決スペシャリスト、SEOコンサルティング)

認識を変える。永遠にコンテンツを制作し続ける必要はない

メディア運営を始めたら、事業が続く限りずっとコンテンツ(記事)の制作を続けなければいけない、と錯覚しがちですが、実際はそうではありません。

記事数は無意味。低品質コンテンツは足を引っ張るリスクも

まず、オーガニック(自然検索流入)中心のメディアの場合、検索上位を取れない低品質コンテンツはユーザに届かないため、事業に貢献しない=経営リソースの無駄である、という事実を確認しておきます。

検索上位を取れる見込みのないコンテンツを制作するメリットはありません。

※むしろ、低品質コンテンツの割合が多いと、検索エンジンからマイナス評価を受ける可能性すら覚悟しておく必要があります

メディアを運営するなら記事数をどんどん増やさなければいけない、という考えは間違いです。

検索3位・4位以内を目指したコンテンツ制作

コンテンツは「これ以上はない」と胸を張れるものであるべきです。具体的には、CTR(クリック率)50〜10%を見込める3位・4位以内を目指します。

検索3位・4位以内を目指す理由(実際のサイト運営データ)

私が運営している「親子キャンプ.com」(年間20万人ほどが利用)の生データです。2023年12月18日時点での上位クエリ1,000件(総クリック数55,058、総表示回数710,474)を分析すると、検索順位ごとのCTRは以下となります。

CTR = クリック数 ÷ 検索表示回数

検索1位(1〜1.49位)
CTR 44.17%

検索2位(1.5〜2.49位)
CTR 21.76%

検索3位(2.5〜3.49位)
CTR 13.26%

検索4位(3.5〜4.49位)
CTR 11.02%

検索5位(4.5〜5.49位)
CTR 6.68%

検索6位(5.5〜6.49位)
CTR 5.35%

検索7位(6.5〜7.49位)
CTR 3.49%

検索8位(7.5〜8.49位)
CTR 3.22%

検索9位(8.5〜9.49位)
CTR 2.57%

検索10位(9.5〜10.49位)
CTR 2.61%

競合他社もこぞって、検索上位の限られた椅子を狙って、コンテンツを投下してきます。3位・4位以内を目標にしても、5位・6位、10位となるケースもあります。

しかし最初から上位を狙えるクオリティがないのなら、10位以内すら難しいでしょう。

2010年代までは、「質」よりも「量」を重視する傾向は確かにありました。50点・60点のクオリティで良いから、数撃ちゃ当たるでどんどんコンテンツを公開していく。

しかし、検索3位・4位に入れる記事は、3〜4記事のみ。いずれ一流の記事以外は駆逐されていくわけですが、2020年代に入りその状況が加速している実感があります。

この先も、競合となるコンテンツは、際限なく投下され続けるでしょう。しかし一流のクオリティがないのなら、すべてが徒労に終わります。

無駄な努力をする側に回るのではなく、クオリティを重視する制作に切り替えて、中長期的な成功を掴みたいところです。

いずれ最高品質コンテンツを制作できなくなるタイミングが来る

SEOの本質はコンテンツのクオリティである、という事実を理解いただけたでしょうか。

しかしながら、「これ以上はない」と胸を張れる最高品質コンテンツは、無限に制作できるわけではありません。理由は主に2つです。

  1. ユーザ(潜在顧客や見込み客)が抱える悩みは有限である
  2. その事業体が強みを発揮できるテーマ・話題は限られる

50点・60点ではなく、80点台後半〜90点台の一流コンテンツを目指すわけですから、事業そのものが持つ「強み」や「差別化要因」、社員など構成メンバーが持つ知識・経験・技術を存分に活かしていく必要があります。

門外漢のテーマで、一流コンテンツを制作することはできませんし、また制作するメリットも薄いでしょう(事業的成果に直結させるのが難しいため)。

守備範囲内のコンテンツをあらかた作り終えたとき、オウンドメディアは成熟期を迎え、完成形となります。

オウンドメディアは成熟するとCVを獲得し続けてくれる半永久資産となる

クオリティ重視のコンテンツ制作が正解であるもう一つの理由は、成熟期(完成形)を迎えたとき、CV(コンバージョン)を獲得し続けてくれる、半永久的な資産となるからです。

「古い記事は検索順位が落ちてしまう」という誤解があります。実際には「ユーザの役に立たなくなった記事は、検索順位が落ちる」が正解です。

つまり、古くなった情報を更新したり、環境・価値観等の変化に合わせて内容をブラッシュアップしたり、メンテナンスを行い、ユーザにとって価値のあるコンテンツであり続けることができれば、検索順位はそれ相応に保たれます。

これは私自身が運営しているメディアで実証している事実です。

以降、メンテナンスの他は、勝算が見込めるテーマが見つかったときにピンポイントで新規コンテンツを制作する程度でよく、運営にかかる経費も、労力も、極小の状態となります。

完成形での優れた費用対効果、マーケティング手段としての効率の良さが、最大の恩恵です。

この目指すべきゴールが明確になれば、次に解説していく「立ち上げ期」「検証期」「制作期」「成熟期」各フェーズでどう判断し何をすべきかが明確になり、無駄なく最速での成長が見込めます。

1. 立ち上げ期

戦略

事業全体の中で、オウンドメディアがどのような立ち位置にあり、どのような役割を担うのか。何のために運営し、具体的にどんな成果を目指すのか。

戦略のグランドデザインを描きます。

ここがブレると、チームが同じ方向を向くことができないため、経営リソースを無駄にしたり、成果を出せず撤退となったりするリスクが高くなります。

たとえば上場を目指すなら、然るべき計画と準備をもって臨むはずです。難易度が高いと誰もが理解しているからです。

オウンドメディアを活用したマーケティングも、昨今ではかなり難易度の高い取り組みです。

2000年代、2010年代までは、コンテンツを公開すれば公開しただけメディアは拡大し、成果を出すことができました。

しかし2020年代以降は、Webコンテンツの成熟にともない、本当の一流コンテンツだけが生き残れる環境になりつつあります。「やらないよりやったほうがいい」という程度では、成功させるのは困難となっています。

見切り発車でオウンドメディアを始めてしまった場合も、一度立ち返って戦略を整理する価値があります。

戦術

目指す成果に繋げるために、コンテンツをどのように制作していくのか、具体的な戦術を固めていきます。

メディアへの流入経路はオーガニック(自然検索流入)がほぼすべてとなるケースが多いでしょう。

※「数万フォロワークラスのSNSアカウントを所持している」「話題によってバズを引き起こす熱心なファンを抱えている」等の場合は、この限りではありません

つまりSEOが生命線となり、記事の前半でも解説した通り、コンテンツのクオリティを追い求める必要があります。

そのための各種レギュレーションを定めていきます。チーム全員が同じ方向を見て、誰が担っても同じ成果を出せる環境を作れることが理想です。

準備は多岐に渡り、一例を紹介すると以下のとおりとなります。

  • メディア方針、トンマナの決定
  • 原稿規定
  • 原稿料・経費規定
  • 制作フローの構築
  • SEO実行体制整備
  • マニュアル作成(制作ルール、表記ルール、画像使用ルール、CMS作業ルールetc.)
  • 人材の採用育成、制作チームマネジメント

費用対効果の分析

“かけるお金” と “見込む成果” から判断して、本当に事業に貢献するのか? をよく検討します。

説明してきたとおり、Web上に存在するコンテンツの成熟度が飛躍的に高まっている現代では、「やったもん勝ちで成果が出る」というものではありません。

検討のポイントは、以下の2点です。

  1. 成熟期(完成形)に運営経費が極小となった段階で、CVをどれくらい獲得できていれば、他の広告費と比較して費用対効果が妥当と言えるか
  2. 成熟期に到達するまでに、どれくらいの年月と経費をかけるか

※「2」の経費は「1」での費用対効果の試算に含めて考え、成熟期を迎えてからどれくらいでペイするかを検討することも重要です

短期的なランニングコストだけで費用対効果を見積れば、オウンドメディアを活用したマーケティングの最大の利点を見落とすことに繋がるので、注意が必要です。

検討の結果、「やらないほうがマシ」という結論となったり、他のデジタルマーケティング手段との比較で優先度を下げたり、という可能性も十分にあります。

また、「見合う成果がいつ得られるのか」という見通しを持っておくことも重要です。社内を説得し、投資し続けるために欠かせません。

最適化スキームの準備

メディア運営は不確定要素を多く含みます。どんなに綿密に計画を立てても、実際にやってみるとうまく機能しなかったり、想定通りに進まなかったりするのが通常です。

たとえば一定のスキルを持ったライターを●名採用したい、と思っていても、最適な人材が見つからず、計画どおりのコンテンツ制作ができないかもしれません。

また良いコンテンツを制作できたと思っても、競合がそれを上回るコンテンツを出してくる可能性もあります。

このように自社でコントロールできる範囲を超えた、外的要因に、どうしても左右されます。

だからこそ、問題点があれば検証し、改善し、最適化していく作業が欠かせません。それを「いつ」「誰が」「どのような方法で」進めるのか、想定しておきましょう。

2. 検証期

本格的な記事制作に入る前に、事前に想定していた成果(成熟期に費用対効果に見合ったCV数を獲得する)が本当に見込めるのか、検証を行うフェーズです。

今後の良質なコンテンツ制作の手がかりを十分に得るためにも、30記事程度は制作できると良いでしょう。

また、期間は、記事を公開してから検索エンジンの評価が定まるまでの十分な時間を取るため、3ヶ月〜半年程度を経てからの検証が理想です。

クオリティチェック

中長期的に検索上位を保てる、最高品質のコンテンツを制作できているか確認します。

コンテンツそのものの評価はもちろん、Google Analyticsでは「平均エンゲージメント時間」、Search Consoleでは「インデックス作成」を中心に、しっかりとユーザや検索エンジンに高評価を得ているかを確認します。

コンテンツのクオリティに主眼をおいたSEOチェック項目は、以下で詳しく紹介していますので、参考にしてください。

目標達成までのロードマップを描けるか?

検証期には、「立ち上げ期」での想定からの様々なズレが顕在化するはずです。

問題があれば改善し、成熟期の完成形に少しでも早く近づけるように、運営を最適化していきます。

成熟期に到達するまでのロードマップが描けるようであれば、本格的な制作に移っていきます。

逆に、少々の改善ではどうにもならないと見込まれるケースもあります。

たとえば、潜在顧客や見込み客となるユーザの母数を大きく見誤っていた場合。このままメディアを大きくしても、期待するCV数を獲得できないとなれば、傷を大きくする前の撤退も視野に入ります。

3. 制作期

本格的なコンテンツ制作のためのチーム最適化

コンテンツ制作を加速させ、成熟期に可能な限り早くたどり着けるように、運営を最適化していきます。

このフェーズで、ほとんどのメディアにとって悩みのタネとなるのが、ライターやディレクターなど、コンテンツ制作のための人材確保です。

50点・60点の記事では勝負にならず、80点台後半〜90点台の一流コンテンツを目指すわけですから、能力の高い人材でなければいけません。

業界やジャンル、ユーザのセグメントが特殊な場合には、そもそも対応できる人材の絶対数が少ないケースもあります。

状況によっては、職業ライターを採用するだけでなく、事業のテーマに熱意を持つファンやマニアをプロライターとして育成することも視野に入ります。

※プロライターとしてのスキルは、あとから育めるものです。当方には100名以上のライターを育成してきた実績がありますので、お困りの場合はご相談ください

また、ライター人材は、モチベーション維持の難しさや、単価の安さを主要因として、恒常的な入れ替わりがあるのが通常です。

ライターの立場で環境を整え、働きやすくしたり、一人ひとりを尊重するマネジメントに留意したり、少しでも長く働いてもらえるような工夫が求められます。

報酬体系も重要です。そもそも、しっかり稼働しても生活が成り立たないレベルの報酬水準では、ライターが働き続けてくれるはずがありません。成果ボーナスも含め、相応の報酬を用意すべきです。

外部リンク施策あれこれ

制作期では、外部リンク(バックリンク)を増やしていくための戦術にも取り組んでいきます。

他社・他者が運営しているメディア・ホームページ等に、自社メディアを取り上げてもらう(ハイパーリンクを貼ってもらう)ということです。

良質な外部リンクがあるメディアは、検索エンジンの評価が高まる可能性があります。状況によってはそのメディアからの流入が見込めたり、第三者によってさらに取り上げられたりする可能性もあります。

外部リンクはどのようなサイトでもいいわけではありません。ポイントは「関連性」と「クオリティ」です。

事業や業界に関係がなかったり、低品質コンテンツばかりのサイトであったりは、マイナス評価になる可能性もあるため、慎重な検討が必要です。

業界や分野、事業の内容によっても大きく変わりますが、代表的なものを紹介すると、以下のような施策が考えられます。

  1. PRTimesのプレスリリース配信を活用し、話題として取り上げてもらえるような施策を実施する
  2. 自社メディアで特集記事を組み、記事で取り上げた事業者やメディアに、掲載報告記事のUPを依頼する
  3. 有用な外部リンクとなるメディアに、そのメディアにとっても利点となるコンテンツを用意し、掲載を依頼する(ゲストポスティング)
  4. 業界やエリアを代表する協会等に参加し、会員企業として掲載される

4. 成熟期

費用対効果の確認

前半で説明した通り、最高品質コンテンツを制作するネタが見つけにくくなるか、掛ける費用と労力が見合わなくなるタイミングが訪れます。成熟期に差し掛かった合図です。

「立ち上げ期」に想定していたCV数を獲得できていることを確認します。物足りない場合は、コンテンツ内のCVへの導線を見直すのも、効果がある場合が多いでしょう。

新規コンテンツ制作の必要性が薄れるため、計画的に制作チームを縮小していきます。

運営経費が極小の状態となったときに、費用対効果が満足のいく水準となっていれば、オウンドメディア運営は成功です。

検索順位を保つメンテナンス

公開から時間が経った記事でも、ユーザにとって価値のあるコンテンツであり続けることができれば、検索順位を保てます

定期的にコンテンツの内容を見直し、古くなっている情報を最新の内容に更新したり、環境や価値観の変化で役に立たなくなっている情報を差し替えるなど、メンテナンスを行います。

なお、後発のコンテンツに、クオリティで上回られてしまった場合は、相対的に順位は落ちます。これはクオリティで上回られている以上、仕方のない結果です。

ブラッシュアップしてクオリティでの再逆転を目指すか、検索順位の低下を甘んじて受け入れるかは、経営リソースと見込める成果からの比較検討となります。

メディア立ち上げ〜成熟期までフル対応しています

当方では、様々な外部メディアへの参画や、自身で運営するメディアでの経験から、すべてのフェーズに完全対応しています。

すでに「3.制作期」に入っているけれど「1.立ち上げ期」でやるべき戦略・戦術の策定をおろそかにしてしまったので、改めて見直したい、などというケースも多々あります。

様々なシチュエーションに対応できる引き出しがありますので、ぜひお気軽にご相談ください。