待機児童問題など行政上の課題から、電車内で泣きわめく子供とその親に注がれる冷たい視線まで……子育てに奮闘中のお父さん、お母さんならば、日本社会における子育て環境の厳しさを、嫌というほど実感していますよね。社会のあり方そのものを根本から変える必要がある事実は、改めて言うまでもありません。
とは言え、現実問題としては、社会が今日明日にいきなり変わるわけではありません。文句ばかり言っているうちに子供は成長してしまうんですよね。厳しい環境なりに力を合わせて、子育てを楽しんでいく必要があります。
そんな中、無視できないのが、子育てにおけるパートナーの存在です。夫婦関係が破綻していては、とても共働きしながら子育てなんて不可能ですよね。今回は、「持続可能なパートナーシップってなんだろう?」をテーマに開催されたワーキング・ペアレンツサミットvol.1の様子を紹介します! いやー、改めて考えると、「持続可能なパートナーシップ」って、本当に答がありませんね。
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主催したのはこんな団体
オトナノセナカ
大人が自分の強味や個性を自覚して、いきいきしていなければ、大人の背中を見て育つ子供たちの未来は危うい。そんな問題意識を持ち、対話を通して刺激し合いながら共に成長していく『共育』をベースに、大人の『意識改革』と『きょういく改革』を目指す団体です。
キラきゃりママ
キラきゃりママ | 働くママのリアルを、みんなの知恵で支える
子育てと仕事を両立させつつも、心豊かに生活できる社会をつくりたい。ソーシャルイノベーションを目指し、働く母親たち『キラきゃりママモデル』と共に、社会貢献プロジェクトなど様々な活動を展開している団体です。
asobi基地
当WEBマガジンでは何度も取り上げているasobi基地が、今回は託児担当でイベント協力。子供がのびのび本来の力を発揮できる「場」です。
パートナーシップってなんだっけ?
子供たちは、様々なパートナーシップに見守られ、育まれて、大人へと成長していきます。夫婦関係はもちろんのこと、実家や近所、友人知人との関係なども当てはまるでしょう。
私も3歳と1歳の子育て中なので実感しますが、パートナーシップは子育てに必要不可欠な要素です。うまくいくことも、大きな問題を抱えることもあるのにも関わらず、それらをざっくばらんに語り合い、共有できる場所はほとんどありません。
そこでワーキング・ペアレンツサミットvol.1では、「持続可能なパートナーシップってなんだろう?」をテーマに、ワールドカフェやブレインストーミングを駆使しつつ、対話を深めていきました。
『オトナノセナカ』の小竹めぐみさんのファシリテートにより、イベントが始まります。まずはアイスブレイク。名札に書いたニックネームと3つのキーワードを元に、5分間でなるべく多くの人と自己紹介をしあいます。
続いてグループに分かれ、「パートナーシップから思い浮かぶエピソード」を思いつくがままに語り合います。
既婚者も未婚者もいるなか、「パートナーと言えば対等な関係という気がする」という話から、「週に何度も実家に帰ると言われる」という深刻な話まで、様々なパートナーシップが語られていきます。みな様々に違う話をしているようでもあり、根本では同じ話をしているようでもあります。
『持続可能なパートナーシップってなんだろう?』をテーマに対話を深める
キーワードを思いつく限りポストイットに書き出していくブレインストーミングが始まります。テーマは「よいパートナーシップとは?」と「パートナーシップの難しい点」の2つです。
キーワードを書き出したポストイットを、ホワイトボードに貼り、全員で眺めます。
「目標が同じだとうまくいきそう」「(考え方が違う、バックグラウンドが違うなど)違いがキーワードなのかな、と思った」「地雷がある、というワードが面白かった。敢えて地雷を踏まないようにすればいい関係にできるのかも」など、様々な感想が聞かれました。
さらに3〜4人ずつのグループに分かれ、ワールドカフェで『持続可能なパートナーシップってなんだろう?』というテーマを深めていきます。自分自身の体験を語り、気になる内容を問題提起をし、思うがままに話を広げていきます。
これ、という結論はありません。対話を重ねる中で、ふと心に引っかかった何かが「新しい気づき」の重要な糸口になります。
私の場合、最終的には、「自然な関係」というワードが心に引っかかりました。例えば、同じ目的を持てばやっていけるのでは、という意見がありました。でも、その“同じ目的”が自然に生まれたものでなく、意図的に作りだしたものだったとしたら、一時的には何とかなっても、持続可能なパートナーシップとは言えないのではないかと直感したのです。
個人的な結論は、持続可能なパートナーシップとは「自然と手をつないでしまうような関係」。極端に言えば、(一時的な感情の昂ぶりでなく)この人と本当にやっていけるのか、と疑問を抱いてしまう関係では、持続可能なパートナーシップたりえないのではないかと思いました。
どうしたら「自然と手をつないでしまうような関係」を生み出せるのかは、よくわかりません。運かもしれませんし、何かコツがあるのかもしれません。宿題として持って帰ることにしました。
チャイルド・ファミリーコンサルタントと僧侶のゲストトーク
それぞれの気づきを、紙に絵として書き出します。続いてゲストトーク・セッションです。
最初はチャイルド・ファミリーコンサルタントとして、子供だけでなく家族そのものの支援活動をしている山本直美氏。「パートナーが美味しい食事を作ってくれたら、何と言いますか?」と問いかけます。「凄い」「美味しい」「ありがとう」など、様々な意見が出されますが、これでは不充分だと指摘します。
なぜなら、もっと具体的に「どんなふうに美味しいのか」「何がありがたいのか」言わなければ伝わらないからです。これは子供も同様で、「凄い!」「できたね!」と言われても、もっと具体的でなければ何を褒められているのかがわからないのです。
パートナーシップを保つには、よいコミュニケーションがとれている必要があります。なぜ山本氏が言葉を大切にしてほしいと考えているのか、理由がよく理解できるトークでした。
続いて浄土真宗緑泉寺の青江 覚峰(あおえ かくほう)住職のトークです。説教なれしているせいか、自然に引き込まれてしまう語り口が魅力的でした。青江住職は、結婚したのと僧侶になったのが同時期だったそうです。伝道が使命である僧侶は執着を捨てるべきなのに、家族を持ってしまってはままならない。今でもある部分では結婚するべきでなかったと考えているそうです。
一方、家族を持ったことで、妻や子供が喜んでくれれば自分が嬉しいと実感でき、「みんなが幸せになる」という大乗仏教の教えが、頭だけでなく、本当の意味で理解できたと言います。パートナーシップを保つコツは、相手を気に掛けること。そのために、相手の名前を呼ぶところがスタートです、と話してくださいました。
ありがとう、を交わしあう
絵にした今日の気づきを共有し合った後は、場を共有した人たちと「ありがとう」を交わしあいます。
みなさんの表情を見れば、過ごした濃密な時間や、得られた気づきの豊かさが伝わるのではないでしょうか。
イベントが終了したあとも、あちこで参加者同士が名残惜しむかのように話し続けている様子が見られました。私自身にとっても、非常におもしろい時間となりました。
以上、ワーキング・ペアレンツサミットvol.1のレポートをお届けしました。
もし関心を持たれた方がいらっしゃいましたら、ぜひ各団体のWebサイトをチェックしてください!