一般財団法人「東京サドベリースクール」から招待を受けて、もうすぐ5歳になる娘と一緒に遊びに行ってきましたので、レポートします。
きっかけは、以前書いたこちらの記事。
もともと私は、「もし子供たちが小学校に行きたくないって言い出したときのために、ほかの選択肢を用意しておこう。うっしっし」という考えでいました。
選択肢の一つとしてサドベリースクールの存在を知り、おもに自分自身の考えを整理するために書いた記事です。
これが、東京サドベリースクール代表の杉山まさるさんの目に止まったそうで、メールをいただきました。
東京サドベリースクール概要
サドベリースクールの特徴については、上記のまとめ記事をご覧ください。
一言で表現すれば、こどもの自発性を最大限に尊重する学校です。
授業もカリキュラムもチャイムもなく、ひたすら自分自身の責任において「何をするか」「何をしないか」を決めます。
理念は、
・あるがままの自分を信頼し選択することで自分の人生を生きる
・自由と社会性の調和
の2つです。これも、こどもたちも含めた皆で、じっくり時間をかけて話し合って、決めたそうです(サドベリーでは、こどもも大人と同等の一票の権利を持つ)。
個人的に、注目しておきたいのは後者です。
サドベリースクールと言うと、こどもに我慢をさせない学校だと勘違いする方も少なからずいると思いますが、実際には自分たちで決めたルールを必ず守らなければいけません。
なぜなら、
「サドベリーは自由ではありますが、自由だけで他の人のことを考えないのでは、自分勝手でしかない(杉山まさる)」
からです。
コミュニティとしての調和を遵守しつつ、自分の好きなことを見つけて自由に行動できるのが、東京サドベリースクールということでした。
東京サドベリースクールの風景
突然、オーブントースターを持って2階に駆け上がった女の子たち。
何事かと思ったらプラ板づくりを始めた。
キッチンでは料理をする姿も。
毎日のように料理をしているという彼女は18歳で、この春に卒業していくそう。
音楽が好きでスクール内でコンサートを開催する子、小説を一日中書いている子など、それぞれに個性を磨いている。
仮に1日中ゲームをやっていたとしても、誰も止めさせようとしないし、叱らない。
率直な感想:並みの神経の親では入学させられないだろう
サドベリースクールを、天国のような環境だと肯定的に捉える方も、少なからずいらっしゃると思います。
が、基本的には、「並みの神経の親では入学させられないだろうな」というのが率直な感想です。
たとえば、ゲームに何時間も夢中になっている子を見れば、
「こんなことに時間を費やしているうちに、ふつうの小学校に行っている子は漢字を覚えたり、足し算・引き算のやり方を習っている」
という現実が、少なからずのしかかってきます。
日本人ならば、ほとんど誰もが、同じ水準の教育を平等に受けてきた経験があるわけで、これは致し方ないところでしょう。
実際には、数時間の間に、ゲームをやっている子は入れ替わっていたし、十数人がいる中でゲームをやっていたのは数人でしかありませんでした。
何年もゲームだけやり続けるということは、絶対にありえません。
が、理屈を越えて「本当にこれでいいのか?」という感情がわき起こってしまうのが、一般的な感覚だと思います。
これが実際に東京サドベリースクールに足を踏み入れて、はじめて得られた実感です。
それ以外は、個人的には、想定外だったり意外だったりした部分はありませんでした。
自分がやりたいことを自分で決めてやっている、異年齢の子たちのコミュニティで日々を過ごせるという価値は、他ではなかなか得られるものではなく、申し分がないと思いました。
娘の感想:「わたしもあんなふうに生活したい!パパなんかもういいから!!」ヾ(`Д´)ノ”彡☆
もうすぐ5歳になる娘は、行く前から、
娘「学校に行くの始めて」ヾ(〃^∇^)ノわぁい♪
という感じで、到着して玄関に入った瞬間からくまなく家宅捜索を始め、あちこちいじり回していました。
生徒たちの輪に紛れ込む姿は、すでに3年間くらい通っているように違和感がなく、思わず苦笑してしまったくらいです。
いつもの保育園とどこが違ったか?を尋ねると、
娘「2階に行けるところ」(‘-‘*)エヘ
との回答で、幼児の言葉足らずを捕捉すると、自分の意志で好きなところへ行っていい、というところが、とてつもなく新鮮だったようです。
確かに、小中学校はもとより、保育園でさえ、みんなと同じ場所で、みんなと同じことをさせます。
落ち着きがなく、みんなと同じことができないと、それがあたかも悪い事であるかのように考えてしまうのが一般的な日本の教育です。
ちなみに娘は帰り際に、ものすごーくグズりました。
外に出てバス停に向かう途中も、非常に怒っており、
「わたしもあんなふうに生活したい!パパなんかもういいから!!」ヾ(*`Д´*)ノ”彡☆
と手がつけられない状態でした。
東京サドベリースクール・スタッフ杉山まさる|一問一答
最後に東京サドベリースクール・スタッフの杉山まさるさんとの雑談や対話の中から、心に残ったやりとりを、一問一答形式で紹介したいと思います。
Q. サドベリースクールのスタッフは、その性質上、小学校の教師のように授業の準備、宿題づくり、学級通信づくりなどはないと思いますが、どのように時間を使っていますか?
大きいのは、学校の維持に必要な作業です。メール対応、金銭面の管理、パワーポイントの資料作成、ホームページの管理、入学希望者への説明・面談。公立学校の教師は経営の心配をする必要はありませんが、東京サドベリースクールではすべて自分たちでやる必要があります。特にサドベリーのような学校は、色々なご不安があって、入学される方がそれほど多くはないので、難しさがあるのは事実です。
Q. 「サドベリースクールはこどもに我慢をさせない学校なのではないか」という誤解があるのではないでしょうか。
ときどき誤解はあります。実際には、けっこうこどもたちは我慢しています。東京サドベリースクールはみんなの場所なので、自分たちで決めたルールは守らなければいけないからです。
ただし、理不尽な我慢はありません。たとえば欲しいものがあれば、自分で動いて、しかるべき行動と手続きがあれば、手に入れられる学校です。
Q. 小学校時代を思い返してみると、彫刻刀セットだとか、裁縫セットだとか、みんな一律に買わされたのが、今になって思うと不思議です。サドベリースクールは正反対の考え方ですよね。
人はそれぞれ違います。興味を持つ対象も、どういうタイミングで学びたいと思うかもそれぞれ違うので、そのときに必要なことを本人が選んでいけばいい、という考え方です。
Q. これからの時代、現在の画一的な教育のあり方に疑問の声を挙げる人が増えてくるのではないかと感じているのですが、いかがでしょうか。
サドベリースクールは、すべての子に合う学校ではないと思っています。ただ、今ある一つの教育システムだけではなくて、いろいろな教育が近所にあって、あなたはシュタイナーなんだね、あなたはモンテッソーリなんだね、あなたは一般的な学校なんだね、みんな違うけどどれもOKだよね、というふうに、それぞれに合った教育を選択するのが当たり前な社会になれば、それが一番健全なのではないかな、とは思います。
Q. サドベリースクールでは、こどもの自発性を尊重するわけですが、知らない事に対して興味は持てません。興味のきっかけの提供についてはどのような考え方ですか?
私たちでは、特になにもしていません。きっかけを提供しようとすると、「大人がさせたいこと」になってしまうからです。
こどもがしたいことをさせるのがサドベリースクール。こどもさんの世界を広げるのは、スクールではなく、家庭の役割になります。
Q. 「読み書き算数など、最低限の教育だけでもやったほうがいいのではないか」という意見もあると思いますが。
すべてこどもたちに任せています。本人がやりたいと思ったり、学ぶ必要があると感じたときに学ぶのが一番だという考えです。
それ以外のタイミングでやらせようとすると、むしろ嫌いになってしまったり、「これが必要だ」と自分で考える力を奪ってしまう可能性がある、という考え方です。
Q. 一度も通常の小学校などに通った経験のない子の事例はありますか?
東京サドベリースクールは生まれてまだ5年、もうすぐ6年ですが、小学生からアメリカのサドベリースクールに通っていた15歳の女の子が在籍しています。
読み書きや計算もできますし、敬語も使えます。マンガを読んでいるとわからない字が出てくるのでお父さんお母さんに聞いたり、スーパーやコンビニで買い物をするのに計算ができないと困るので学んだり。彼女は学ぶことにストレスがないですね。
Q. サドベリースクールに通わせる際に親として難しいのはどんな点ですか?
こどもを信じていつまで待てるか?です。サドベリースクールは1年や2年通う場所ではなくて、10年通って成果が見えてくる場所です。
極端に言えば、18歳になって足し算・引き算ができなくても待てるのかどうか。実際には足し算・引き算はみなできますけどね。
以上、一部ではありますが、杉山まさるさんの言葉を紹介しました。
もちろん、この一問一答は私が要約したものです。
疑問に感じる点があったり、東京サドベリースクールに関心を持ったりした方は、ぜひ直接スクールまでお問い合わせください。
見学のきっかけをくださった杉山さん、当日受け入れてくださった生徒のみなさん、楽しい経験をありがとうございました。
娘ともども御礼申し上げます!