大手スーパーなどから余剰品を提供してもらい、貧困層の人だけに格安で販売するスーパーがこのほど、英中部バーンズリーで開店した。食品の無駄をなくし、貧困層の支援にもなる一石二鳥の取り組みとして、注目されている。
「社会的スーパーマーケット」と呼ばれる仕組みで、欧州では経済危機に見舞われたギリシャやスペインなどを中心に計千店以上あるとされるが、英国では初めて。
包装・表示ミス、過剰生産などで売れなくなった食品や生活用品を複数の大手チェーンから無料や安値で引き取り、最大7割引きで販売。期限切れ商品や酒、たばこは扱わない。
英で貧困層専用スーパー開店 大手から余剰品引き取り :日本経済新聞
日本では、年間300〜400万トンの食品ロスが発生
たとえば日本では、農林水産省の推計によると、本来食べられるのに廃棄されている「食品ロス」が、年間500~800万トン発生しているとのこと。
うち、食品事業者から発生しているのは、300〜400万トン。もし “貧困層専用スーパー” 的なものが実現すれば、これに手をつけられるわけですね。
僕は、我が家の冷蔵庫をほぼ取り仕切っているので、家庭から出る食品ロスには、けっこう神経を尖らせています。
昔は、買いたい食材を買ってきていたので、使い切れずに廃棄することがけっこうありました。あれ、すごい嫌なんですよねー。お金がもったいないし、捨てるときの罪悪感もあるし。
いまは、1週間の献立をあらかじめ考えて、必要なものだけを食材宅配サービスでネット注文することによって、廃棄はかなり減りました。
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これでも、予定外の外食が入ってきてしまったり、お歳暮など贈答品が届いてしまったりすると、どうしても余らせてしまうケースはあるんですが。
それはともかく。
食品事業者から出る食品ロスとなると、これはまた家庭とは違った難しさがあります。
ロスを出したほうが儲かってしまう問題
問題は、食品事業者はロスしたほうが儲けられてしまう点にあるんじゃないか、と想像しています。
もちろん、無駄をゼロにできれば儲けは最大化するわけですが、品切れを出してしまうよりは、少し売れ残りを発生させるくらいのほうがいい。
規格外品や返品も見越して、少し多めに生産する、となってしまうわけです。
消費者側の意識の問題もありますよね。なんだよ品切れかよ、となってしまうと、役立たずの小売店というレッテルを貼ってしまいがちです。
量販店やコンビニのアイデンティティは、いつどこへいっても同じ物が常に売っている、というところになってしまっていますから。
消費者も期待するし、事業者も消費者離れを恐れて過剰発注・過剰生産を止められない。
僕自身は、食品事業者で働いた経験がないので、現場がどんな惨状なのか知る由もないわけですが、けっこう酷い状況のような気がしています。
“貧困層専用スーパー” じゃなくて “エコ志向者専用スーパー” にすればいい
日経新聞の記事にあるような “貧困層専用スーパー” は、ロスを減らすのと同時に、貧困者救済の前提があります。
貧困層が多く住む地域が出店対象で、一定の福祉手当を受け取る人の会員制になっており、本当に必要な人だけに利用を限る工夫をしている。
家計のやりくりや借金返済の相談などの支援サービスも提供し、会員登録から半年後には生活状況をチェックして自立を促す。店の販売利益はこうした支援事業に充てる仕組みだ。
それだけ貧富の差が激しく、貧困が大きな問題になっているというお国事情もあるんでしょう。
日本も貧困問題が語られるようになってきましたが、まだ「貧困層が多く住む地域」という言い方にはピンときません。
加えて、もし日本に “貧困層専用スーパー” があったら、残念ながら差別対象になるでしょうし、利用者も敬遠する気がします。
でもこれはすごくいい仕組みなので、“エコ志向者専用スーパー” というファッションにしてしまえばいいと思います。
イオンをぶっ潰すくらいのインパクトが出せたら、世の中は確実に変わる
“エコ志向者専用スーパー”、やり方次第で、けっこう売れるんじゃないですか。
給料が上がらない、増税だ、という世の中ですからね。
もし、イオンやヨーカドーの売上に影響が出るくらいのインパクトになったら、事業者も本気でロス問題に取り組むでしょう。
だって、ロスを出さないか、ロスを自前で売りさばく仕組みを作らなければ、消費者が離れてしまうんですからね。
いやこれ、本当におもしろい!