何歳になっても成長できる……と言うか、目から鱗が落ちて感動するようなことがあるんですよね。
この本はすごい。
複雑系とはなんぞや。
僕は、物事を分析するのが好きなタイプの人間です。
どうなっているのか仕組みがわからないと気持ち悪い。
経験則で「こうなる」とわかってはいても、それを理屈に落とし込んでおかないと、せっかくの知恵が手元をすり抜けて、逃げて行ってしまうような気がするんです。
僕の土台には分析があります。それは事実です。
でも、分析ではうまくいかないケースがあるのにも気づいていました。
たとえば、Appleはなぜ成功したのか。どうしてスティーブ・ジョブズは世の中を変えることができたのか。
ためしに「Appleが成功した理由」とGoogle検索をすると、さまざまな記事が見つかります。
様々な方が、様々な見地から、様々な内容を語っています。
中にはちんぷんかんぷんな記事もあるかもしれないけれど、基本的にはどれも間違ってはいないはずです。
「なるほど、確かにそういう面はある」と納得できるんじゃないでしょうか。
一方で、どの記事を読んでも、物足りなさを感じると思うんです。
Appleやスティーブ・ジョブズが好きな人ほど、「大切な何かが抜けてしまっている……」ように感じるはずです。
なぜか。
なぜ、我々は、「複雑な問題」を解決できないのか。
この疑問を抱いている方に、本書を読んで頂きたい。
そして、この疑問に対する答えは、明確です。
我々が、一つの「根本的な誤解」を抱いているからです。
どれほど複雑な問題も、徹底的に「分析」をすれば、必ず解決策が見つかる。
それほど巨大で複雑な問題も、それを小さな部分に「分割」し、それぞれを詳細に「分析」し、最後にそれを「総合」すれば、必ず解決策が見つかる。
我々が、そう信じ込んでいるからです。
しかし、実は、「複雑な問題」は、それを小さな部分に「分割」し、どれほど徹底的に「分析」しても、その解決策は見つかりません。
なぜなら、この世の中には、一つの冷厳な「法則」があるからです。
物事が複雑になっていくと、「新たな性質」を獲得する。
その法則です。
それゆえ、物事を「分析」するために、それを小さな部分に「分割」すると、その瞬間に、獲得された「新たな性質」が消えてしまうからです。
田坂広志『まず、世界観を変えよ――複雑系のマネジメント』
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※太字は引用者による
僕は今まで、うまく答を見つけられない理由を、分析が足りないからだと思っていました。あるいは、僕自身の能力不足だと考えていました。
どんな大きな対象も、丹念に解きほぐして、根気強く要素を並べていけば、余すところなく理解できる。
Appleが成功した理由も、スティーブ・ジョブズが世の中を変えられた理由も、詳細に分析して言葉を尽くせば説明できる。
と思っていました。
でも、違ったみたい。
重要な事実を見落としていました。
物事が複雑になっていくと、「新たな性質」を獲得する。
物事を「分析」するために、それを小さな部分に「分割」すると、その瞬間に、獲得された「新たな性質」が消えてしまう。
ヾ(*´∀`*)ノ
Appleの真似をしているのに、世界一の企業に近づくどころか、業績が上向きすらしない。
成功したマーケティングを流用したのに、なぜか成果が出ない。
原因はわかっているのに、社会問題を解決できない。
すべて同じ理由、というわけです。
田坂氏は言います。
複雑なものには、「生命」が宿る。
この言葉通り、この世の中のすべての物事は、複雑になると、あたかも「生き物」のような性質を示し始めるのです。
そして、それゆえ、生きた魚を「解剖」すると「生命」が失われてしまうように、複雑なものを「分割」し、「分析」すると、新たに獲得された「生命的な性質」が、消えてしまうのです。
いや、そればかりではない。
「生き物」は、それ自身の「意志」を持つため、自由に操れないのと同様、物事は、複雑になると、「生命的な性質」を獲得するとともに、あたかも「意志」を持っているかのように振る舞い始めるため、それを自由に「管理」し、「制御」し、「操作」することができなくなるのです。田坂広志『まず、世界観を変えよ――複雑系のマネジメント』
では、どうすればいいのか。
同書には、
まず、世界観を変えよ。
それが答えです。
すなわち、我々が無意識に抱いている「機械的世界観」。
それを「生命的世界観」に変えること。
そのことによってのみ、高度な「複雑系」(complex system)になり、高度な「生命的システム」(living system)になった現代の企業、市場、社会に、賢明に処することができるのです。田坂広志『まず、世界観を変えよ――複雑系のマネジメント』
とあります。
また、別のインタビューでは、
生命的システムは、機械と異なり、操作や管理ができません。その代わり、「ツボ」と呼ぶべきものがあります。たとえば、東洋医学は「複雑系の医学」でもありますが、「ツボ」を押せば生命的システムとしての「人体」の状態を変えることができることを熟知しています。
RECRUIT とーりまかし33号 2013年9月発行 田坂広志氏インタビューより
なぜブログ記事を意図的にバズらせることが難しいのか。
なぜ地域の課題解決にフューチャーセンターが向いているのか。
なぜディズニーやAppleの魅力を語り尽くすことができないのか。
長年の疑問が氷解しました。
また、直感で始めた自身の活動が間違いではなかったことが、論理的に説明されもしました。
目から鱗が剥がれ落ちた。
いや、目からコンクリが剥がれ落ちた気分。
“分析” を崇拝している限りは絶対に解決しない問題が存在する。しかも世の中にありふれて。