印象論で語る人は話にならないと実感させてくれるデータ読本|安藤光展『この数字で世界経済のことが10倍わかる』


CSRコンサルタントの安藤光展さんより、『この数字で世界経済のことが10倍わかる ~経済のモノサシと社会のモノサシ~ (数字がわかれば見えてくる)』を献本いただきました。

バランス感覚を養い、説得力のあるプレゼンテーションを実現するために、訓練になる一冊。個人的には、我こそはという学生をはじめ、若い世代に読んでほしいと感じました。

この数字で世界経済のことが10倍わかる ~経済のモノサシと社会のモノサシ~ (数字がわかれば見えてくる)

安藤 光展 技術評論社 2013-12-03
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by ヨメレバ

 

データは文脈を解釈できてこそ価値がある

目の付け所に共感したのが『日本の食料自給率68%はホントなのかウソなのか』というセクションでした。

日本は食料自給率が40%を切っていて、食料自給率がかなり低い国である、と思い込んでいる人は多いのではないかと思います。

これは、例えば河野太郎代議士が強く主張しているんですが、農業の過小評価に繋がっています。

食料自給率が40%を切っているという数字は、カロリーベースで計算しているからこそ出てきたものです。

細かい説明を省いて問題点を箇条書きすると、

・国内生産が多い野菜はカロリーが低く、例えば肉類やバターといった高カロリー輸入品と比べて相対的に過小評価されてしまう
・カロリーベースは、国内生産 / (国内生産+輸入ー輸出)という計算式のため、仮に輸出入が途絶えると食料自給率100%という珍妙な事態になる(もちろん国民は飢える)
・国内生産+輸入ー輸出で農林水産省が出した、一人あたりの消費カロリー2436kcalという数値は、計算上のものであり、厚生労働省が実態を調査した1840kcalとも大きくかけ離れている

【わかりやすい解説】
河野太郎の主張 農業シリーズ1 「食料自給率」のワナ |河野太郎の動画一覧|河野太郎公式サイト

これを生産額ベースで見ると、食料自給率は68%になり、農業のポテンシャルは世界的に見てもかなり高水準であるとわかるわけです。

つまり、ひとくちに食料自給率と言っても、文脈をきちんと解釈できなければ、まるで正反対の意味になってしまうケースがあるわけです。

 

絶妙なバランス感覚が印象的

読んでいて、フェアに言葉を紡いでいる実感がありました。

例えば、『環境先進国になれない、世界6位のリサイクル率の日本』というセクションでは、二酸化炭素排出量について言及しています。

通常、環境対策を語る際には、二酸化炭素を問答無用で悪だと決めつけてしまうケースもありますが、本書では二酸化炭素の悪影響について、次のように記しています。

二酸化炭素がなぜ環境によくないとされているかといえば、それは地球温暖化の原因の一つだからです。ただ、科学者によっては、二酸化炭素は地球温暖化に大きな影響を与えないという立場の人もいます。

上記に代表されるように、偏った価値観に基づいて断定するのではなく、バランス感覚をもってデータを解釈していこうとする姿勢が、好印象でした。

 

批評的に読める人にこそ、おすすめ

本書は、豊富なデータにより世界や日本を取り巻く状況を浮き彫りにしています。が、持論の補強に使おうと思った人には、個人的にはおすすめしません。

そういう方は、“都合の良い事実だけを抜き出す傾向が強い” と考えているからです。

恣意的に利用するのでは、せっかくの本書のフェアな姿勢が、台無しになります。

むしろ、批評的に読める人にこそ、価値があります。

本書におけるデータの解釈は、あくまで安藤光展さん個人の見解です。鵜呑みにするのではなく、賛同できるかどうかを考えながら読むべきです。

僕自身、なるほどと思いながら読んだ箇所も多くありましたし、逆に注目している分野では、本当にそうなのか?と疑問を持ちながら読んだ部分もありました。

見解の相違や、疑問が発生したときに、その理由や原因を丹念に掘り下げていく作業が、物事の本質的な理解に繋がっていきます。

若い世代がバランス感覚を養い、例えば説得力のあるプレゼンテーションを実現するために、非常に訓練になる一冊です。

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