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2211月

なぜ選挙前から「自民党が勝つ」と判るのか説明する

第47回衆議院議員総選挙が行われることになりました。

結果は “自民党の勝利” でまず間違いないんですが、きっと、自民党支持者ではない方の中には、

「自分の周りに、自民党支持者がそんなに多いとは思えないのに、それはおかしい」

と感じる人もいると思うんですよ。

その違和感は、けっして間違っていません。

それでも、自民党大勝の結果が出ます。単純な算数です。

 

自民党の支持層は約4割

政治意識月例調査 – 2014年 | NHK放送文化研究所

上記の調査の、2014年の数値を、平均すると、各党の支持率はおおむね、

自民党 38.2%
民主党6.0%
公明党3.4%
共産党3.1%
維新の党1.2%

となります。それ以外の政党は、1%以下です。

自民党の支持層は、ざっくり4割だと覚えておいてください。

 

4 : 3 : 3の勢力図なら、4が完全勝利を収めるのが小選挙区制

衆議院選挙は、小選挙区比例代表並立制です。

が、大きな要素を占めるのは、うち300議席が決まる小選挙区制です(比例は180議席)。

小選挙区では、得票1位の議員だけが当選します。

たとえば、

候補者A 4万票(当選)
候補者B 3万票
候補者C 3万票

ならば、候補者Aだけが当選します。

ポイントは、候補者Aを支持しない票は、6万票になり、候補者Aの得票数を上回る、という事実です。

 

日本社会全体で見ると自民党支持層は多数派ではない

自民党は、もっとも多い4割の支持を集めているので、小選挙区制では、大勝します。

比例代表も、民主党ほかが1割以下の支持率しかない現状では、大差ないでしょう。

ところが、視点を変えて、自民党を支持しない人という括りで見ると、実は6割もいるわけです。

だから、「自分の周りに、自民党支持者がそんなに多いとは思えない」という感覚が生まれるんです。

インターネットの普及によって、気に入った情報だけを得ることができるようになり、タコツボ化が進んでいるので、よりそのような感覚は強くなります。

 

自民党を負けさせる方法

机上の空論でよければ、自民党を負けさせる方法もあります。

つまり、選挙でこうなればいいわけです。

候補者A 4万票
候補者B+候補者C 6万票(当選)

いわゆる、選挙協力というやつですね。

候補者Bと候補者Cの政党が話し合って、どちらかが立候補を見送れば、候補者Aに勝てます。

でもこれ、実際にはなかなか難しいですよね。

立候補を見送ったBまたはCは、選挙に出られないか、あるいはまったく別の土地での立候補を迫られるわけですから。

【追記】
私の地元である神奈川では、こんな感じです。そう上手くはいきません。
14神奈川衆院選:「神奈川はガチンコ」 民主と維新の調整土壇場で決裂 | カナロコ

 

2年前の総選挙では第3の選択肢として維新が浮上

前回、第46回衆議院総選挙の、得票数と、得票率データを、Wikipediaから借りてきました。

選挙結果

投票率は59.32%。過去最低でした。

今回の選挙も、同水準、もしかしたらもっと下がるかもしれませんね。自民党以外を選択する人にとって、魅力的な受け皿が存在しないからです。

2012年総選挙では、民主党にうんざりした有権者のうち、自民党に投票したくない人は、日本維新の会を選んだ人が多かったようです。

維新の比例代表の得票率は、民主党を上回って、自民党に次ぐ2位でした。

しかし今回、自民党以外に投票しようとしたとき、民主は相変わらずの体たらく、維新はゴタゴタ、みんなの党は勝手に消滅、という調子です。

投票率が下がり、公明党や共産党が相対的に得票率を伸ばし、特に比例代表で、躍進するのかもしれません。

 

比例代表では自民党「堅調」と予想

さて、自民党の数値に目を向けると、小選挙区で43.02%、比例代表で27.62%という得票率でした。

比例代表の数字が思いのほか低いのは、民主党政権以前をしっかり覚えている有権者が、自民党のカムバックに、懐疑的な目を向けていたからでしょう。

もう一つ、小政党が乱立している影響もあります。

比例代表は「死に票」が最も少ないシステムなので、小政党に投票する心理的ハードルが下がり、票が分散します。

今回の選挙も、小政党乱立状態ではありますが、維新は大幅減濃厚、みんなの党は消滅という状態。

相対的に浮上するのは、自民党、そして公明党と共産党以外にイメージできません。

あとは民主党がどこまで盛り返すか。逆にさらに沈没する可能性もあるんじゃないでしょうか。

まあ少なくとも、比例代表で自民党が議席を減らす可能性は、極めて低いのではないでしょうか。

 

小選挙区では自民党の大勝

小選挙区では、冒頭で説明した4 : 3 : 3の勢力構造をどうにかしない限り、自民党の大勝以外の結果は出ません。

実際は4 : 3 : 3どころか、政党支持率だけで見れば、4 : 0.6 : 0.3 : 0.3 : 0.1とか言う感じなんですから、個人で選挙が強い議員を除けば、ほとんど勝負にならないわけです。

野党の唯一の望みは無党派層ですが(こちらも約4割)、低投票率濃厚=彼らの大半は動かない、ということです。

候補者が多い選挙区ほど、自民党候補が当選する可能性が高まります。

野党としては、個人で選挙が強い候補者がいた場合に、いかに野党同士でつぶし合わない選挙協力が実現するかで、自民党の議席数をどれだけ減らせるか、という戦いなんじゃないでしょうか。

逆に、自民党と公明党の選挙協力は、もう、慣れたものなので、野党が頑張っても焼け石に水かもしれません。

 

では大選挙区にしたら天国なのか

こういう話をすると、「小選挙区はクソだ」論が必ず出てきます。

じゃあ、小選挙区をやめて、大選挙区(日本全国一区の比例代表のみ)にしたらどうなるんでしょうか。

前回、第46回衆議院総選挙のデータで、ちょっとやってみましょう。

自民党132議席
日本維新の会98議席
民主党77議席
公明党57議席
みんなの党42議席
共産党29議席
日本未来の党27議席
社民党11議席
ほか7議席

大まかですが、だいたいこんな感じでしょうか。

見た目は楽しそうですね。死に票も減りますし。

が、この状態で考えなければならないのは、必ず連立を組まなければ政権が成り立たないという事実です。

いったい、物事は前に進むんでしょうか。

また、小選挙区制の最大の利点であった政権選択が、事実上不可能になります。

どことどこが連立を組むかは、当選した議員たちが決めるからです。

民主党政権が嫌だから、と他党に投票したのに、民主党が政権に居座り続ける……なんて事態も充分にありえます。

「死に票」が少なくなっても、私たちの思い通りにはならないんですよね。一長一短。

結局のところ「国政選挙、政治で実現できることは、やはりほんの一部でしかないんだ」と、私たちは悟るべきなんでしょう。

2012月

小選挙区をやめてどうするの?

津田大介さんがインターネット国民投票サービスをつくりました。

ゼゼヒヒ – インターネット国民投票

いいですねー。みんなの考え方が可視化されることで、話題に興味を持つ人が増える。ソーシャルメディア時代を象徴するようなサービス。

蛇足ですが、一方で、国民の総意を示す「国民投票」として見ると有意ではないですよね。例えば先日の総選挙前、Twitter界隈では、周囲に自民党支持者が見当たらないので、マスコミの「自民大勝」報道に疑問を呈していた方がちらほらいました。

それは当然で、Twitterをやっている層は多く見積もって全国民の1/5程度。有効投票の半数を占めるシニア世代のほとんどはTwitterなんかやっていません。現時点では「ネット界隈がこんなことを言っている」以上の意味はないわけです。

僕もみなさんの意見を見ていて、一言発言したくなりました(まさにこれこそが津田さんの狙いだと思うんですけど)。

9割以上の人が「現行の小選挙区制は変えるべき」と回答。

本当に?

小選挙区をやめて、いったい、どうしたいと考えているんでしょうか。

問題点があるのはわかります

死票が多い。民意が反映されているとは言えない。結果が大きく振れすぎる。政権が安定しない。

確かに完璧な選挙制度ではないですよね。

異論ありません。

個人的にも、死票が多い=有権者の満足度低下、政治不信の一因になっているのが気になります。

民意が反映されているとは言えないという主張をきほぐしてみると、要は「自分が応援した候補者が当選しないじゃん」という不満があるわけです。そこへ「43%の票で79%の議席を獲得した」というような、不満を正当化できるような数字が出てきたから、声高に叫んでいる人が多いんだろうと思います。

 

民意が反映されたら……余計に混乱するかも

選挙直後に、こんな記事があがっていました。

もし全国1区比例代表ドント方式なら議席配分はどうだったか – what_a_dudeの日記
もし死票が最も少ない形で選挙が行われていたら、どうなっていたか? といシュミレーションです。ちょっと図をお借りするんですけど、

正直言って愕然となりました。

これ、政権が安定するどころの話じゃないですよね。一定勢力の政党がないんで、「どことどこが手を組む」という政局次第で、政権がコロコロ変わることになります。あるいは政権を維持するために、主義主張の合わない政党が手を組む、なんてことも日常茶飯事になりそうです

みなさん、政局は嫌いじゃありませんでしたか。僕は嫌いです。こうなったらこうなったで、国民不在だなんだって文句を言う人がたくさん出てくるでしょう。

 

trial and errorが可能な社会がいい

これは好き嫌いの話になるんだと思うんですが、僕は55年体制のような停滞は嫌です。これじゃダメだ、と思ったら即座に別の方法にチャレンジできるほうが好きです。

仕事でも何でもそうですが、失敗しないようにやるより、やってみて改善するほうが遥かに効率よく前に進めます。

古い社会システムを刷新していかなければいけない現代に向いているのも、trial and errorできる社会だと思ってます。

もし小選挙区を止めて、政権交代が起きにくい制度にしてしまえば、試行錯誤できなくなります。

本当にいいんでしょうか。

 

小選挙区の功罪を見極めるのはこれから

民意をより反映させるかわりに、政権交代を起きにくくする。あるいは中政党が拮抗する国会をつくる。それも一つの考え方です。

でも、それでどうするつもりなんでしょう。メリットがちゃんと見えているんなら、僕が言うべきことは何もありません。が、一時的な感情で小選挙区はダメだ、という人には「小選挙区をやめてどうするの?」と問いかけたい。

 

僕は「正しい選択」なんて幻想だと思ってます。失敗しないように慎重にやろうとしたって、それが正しい保証なんかありません。そう考えていない人もいると思いますが、僕は失敗したら試行錯誤できる小選挙区のほうが、まだ魅力的に見えます。

小選挙区制を見限るにはまだ早い。

上の記事にも書きましたけど、少なくとも、小選挙区の功罪を見極めるには時間が短すぎます。まだ2回しか政権交代が起きていないんですから。

例えば、政権から転落するという経験が、政党や政治家を成長させる可能性に期待してもいいんじゃないでしょうか。従来の政治家の成長の仕方とは違いますけど、それでいいんじゃないでしょうか。

もちろんデメリットが大きすぎるという結論だってあると思いますけど、そうなったらそうなったで議論すればいいんじゃないでしょうか。

みなさんはどう思いますか?

1712月

小選挙区制を見限るにはまだ早い。

自民党は43%の票で79%の議席を獲得した。だからこのシステムはおかしい。

そんな声がちらほら聞こえてきますね。

衆院選:得票率と獲得議席に大きな乖離- 毎日jp(毎日新聞)
今回の衆院選で小選挙区に出馬した自民党候補は、300選挙区の有効投票総数のうち43%の票を得たのに対し、獲得議席数は300議席の79%にあたる237議席と大勝した。一方、民主党は有効投票総数に占める総得票率が22.8%だったが、300議席の9%にすぎない27議席しか獲得できなかった。

でも、小選挙区制というのは元来、そういう思想でつくられています。

メリットは、政権交代が起きること

もう少し言えば、与党が政権から転落することにより、自らを省みる機会が与えられるという大きな利点があります。

 

もし小選挙区制じゃなかったら

未だにずーっと自民党政権が続いていたかも。

中規模政党が乱立して、今より格段に決められない政治になっていたかも。

「こりゃダメだ」と思っても、他の政党に政権を任せるなんて不可能だったかも。

 

死票が多いのは問題点の一つだけど

個人的には政治制度がどうこうより、投票の満足度が低下し、政治不信の一因になっている点が気になります。完全無欠の制度でないことは事実です。

でも、完全無欠の選挙制度なんて、多分ないですよね。

死票が少なければ政治がうまく回るという保証があるわけでもないですし。

池田信夫 blog : 民主政治はなぜ衆愚政治になるのか – ライブドアブログ

 

僕たちはまだ小選挙区制のメリットを検証できていない

すなわち、大敗を喫して自らを省みる機会が与えられた自民党が、どんなふうに党改革に取り組んだのか。

結果が出るのはこれから。

少なくとも安倍晋三、菅義偉-石破茂というラインは、自民党の中では改革派。彼らに期待してみてもいいでしょう(これで族議員や派閥領袖に取り込まれるようじゃ、お話にならないけれど)。

この結果は、ですね。「自民党に対して信頼が戻ってきた」というよりも、3年間の民主党の政治の混乱にNO、ということだろうと思います。自民党が果たして国民の期待に応えていくことができるかどうか? かつての自民党とは変わったのかどうか? 当然国民の厳しいチェック、評価があるだろうと思います。その中で我々が国民の皆さまの期待に応えていくことができるかどうか。大きな責任があると思います。

安倍晋三

自民党の各議員も、これだけ大勝したのに慎重な発言が目立ちます。安倍総裁も、石破幹事長も、(少なくとも今のところは)自民党の置かれている立場をわかっているように思います。

 

「どうせ民主党の二の舞になる」なんて面白味のない予想に興味はない

すぐに支持率は下がる? 来夏の参院選では惨敗する? いやー、くだらないですよねー。そんなことは誰にだって言えます。

もちろん議員たちだってわかってます。そうやって国民の視線を意識せざるをえなくなるからこそ、国会議員も手を抜かずに仕事をするようになるんじゃないでしょうか。

少なくとも現時点では、そんな兆候が見て取れます。

 

小選挙区制の是非を判断するのは、安倍政権を評価してから

さらに言えば、今回政権から転落した民主党の党改革を見てからです。

私たちの責務は、地元の議員一人ひとりをしっかり見ていること。もし脱線したと思ったらきちんと意見を伝えること。

そこまでしっかりやって、それもやっぱり「小選挙区って問題ありすぎるよね」となったら、本格的に議論をはじめればいいんです。

今の時点で小選挙区制を見限るのは、いくらなんでも気が早すぎます!

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