【2】第50回文藝賞受賞作家・桜井晴也インタビュー「だってねえ……暇だし。そりゃ書かないと」

記念すべき第50回の文藝賞を受賞した作家、桜井晴也さんへのインタビュー第2弾。

今回のテーマは、「桜井晴也という人」についてです。

彼は、娯楽や情報が溢れる現代に珍しく、読書・映画観賞・舞台観賞・ゲームにすべてを費やしながら、日々を送っています。読書量は、学生時代には、1日1冊ペースで読書をしていたほど。

スペシャリストとも言えるし、マニアとも言えるし、不器用とも言える。彼にとって書くことは、これらの趣味と同じであるようです。新人作家の日常を掘り下げていきます。

桜井晴也の取扱説明書

——僕と桜井晴也は、2009年ごろからの知り合いだし、言ってみれば僕は桜井晴也のファンみたいなところがあるので、よく知っているんだけれども、文藝賞を受賞して初めて桜井晴也を知った一般の人々はそうではないんですよ。

今日も来る前に、Facebookで「文藝賞受賞作家に話を聞いてくるんだけれど、なにか知りたいことありますか?」と尋ねたら、たとえば「取材重視で書いているのか、プロット重視で書いているのかを知りたい」という話があったわけですよ。

——いわゆる、世の中における一般的な “小説” という概念は、実はすごく偏ったもの。

ただ、普通の人の感覚はそうだろうな、と実感したので、今日は「桜井晴也の取扱説明書」的な話から始めたいんだよね。

会社員として働きながら小説を書く

——最近、何してるんですか?

——作家のインタビューなのに、身も蓋もない。(笑)

——まあでも、給料はちゃんともらえるからいいよね。

学生時代は月に20〜30冊の読書

——仕事以外では何をしているんですか?

——本は、いちばん読んでいるときで、どれくらい読んでいたんですか?

——仕事をしながらでも、10冊は読めているんだ。

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文学ではないはずの演劇が、今いちばん文学的なことをやっている

——映画や舞台はどうですか?

——映画は、流行の映画を観ているんじゃないんだよね。

——舞台については、僕も小説を書いていたころは(つまり子供が生まれる以前)はちょこちょこ観に行っていたんだけど。

桜井晴也としては、舞台のどこがおもしろいと感じているんですか?

——なるほど。言われてみればそうかもしれない。

「だってねえ……暇だし。そりゃ書かないと。」

——仕事をしつつ、これだけいろいろ読んだり、観に行ったりしながら、さらに文章も書いているわけですよね。たとえば300枚をどれくらいのペースで書いているんですか?

——学生時代も同じくらいのペース?

——仕事をしながら書いている現状で、書く時間はどれくらい確保できているんですか?

——ということはもう、暇さえあれば書いているという感じだよね。

ふつうの人の感覚からすると、「なんでそんなに書けるの?」だと思うんだけど。

小説を書くという趣味に近い

——たとえば、「伝えたいことがあるから書きます、それがモチベーションになっています」みたいに、わかりやすいストーリーがあれば、一般の人でも納得しやすい。

でもそこで、まず「暇だから」とくると、ふつうは「???」となるよね。

——じゃあ、ゲームが好きな人が、毎日ゲームをやっているようなもの?

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「結局、デビューしても何が変わるというわけでもない」

——もう一歩踏み込むと、小説家として食べていくつもりはなくても、新人賞を受賞してデビューはしたかったわけじゃないですか。

——なぜなんですかね。たとえば、自分の書いた小説を他人に読んでもらいたい、という感覚は強い?

——そこが本質ではないよね。メジャー志向の僕とは正反対な桜井晴也なので。

一つ言えるのは、デビューすればステージが上がるよね。

「この小説、意味わかんねー」レベルで終わるのではなく、普段から文学を読んでいる人が読んでくれるから、桜井晴也が何をしているのかわかってくれたり、あるいは理解しようとしてくれたりするわけじゃないですか。

——ということはつまり、受賞はコミュニケーションの手段、とでも言ったらいいのか。

——今のところ、何も変わらない?

高橋源一郎氏とのトークショー

——文藝賞の選考委員だった、憧れ(?)の高橋源一郎さんとトークショーはできたよね。

——トークショーはどうでしたか?

——『世界泥棒』は、高橋源一郎には届いた感じですか?

※高橋源一郎はデビュー作『さようなら、ギャングたち』を吉本隆明に向けて書き、当の吉本隆明に批評で取り上げられたことで文壇で認知されるに至った過去があります

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