154月

東京ディズニーリゾートとソーシャルゲームの違い


今日4月15日、東京ディズニーリゾートが30周年を迎えました。そんな中、運営するオリエンタルランドの上西京一郎社長へのインタビューをベースにしたこちらの記事が、とても興味深いものでした。

朝日新聞デジタル:節約してでも幸福追求、明確に オリエンタルランド社長 – 社会
「削るものは削る。でも、使いたいと思うものには、削った部分を投入してでも自分の幸せ感、満足感を達成する。そんな消費マインドが明確になってきているのではないか」

朝日新聞デジタル:「魔法の王国」デフレ知らず TDR開業30周年
ツアー代とは別に、ミッキーマウス柄の子供服や菓子などのおみやげに3万円近く。「ディズニーでは金銭感覚がなくなりますね」TDRは、スーパーのチラシを見比べるような、ふだんの暮らしを忘れさせる。

 

 

ディズニーはソーシャルゲームなのか

個人的には、朝日新聞のこの記事の作り方は「かなり際どいな……」と思っていて、例えば、

■生活切り詰め、夢に惜しみなく
13日夕、福岡県久留米市の造園業、佐藤康博さん(25)が羽田空港から帰路についた。妻の明菜さん(24)、長女の未海(みう)ちゃん(1)との東京旅行。3泊4日で最大の楽しみはディズニーだった。
ツアー代とは別に、ミッキーマウス柄の子供服や菓子などのおみやげに3万円近く。「ディズニーでは金銭感覚がなくなりますね」
TDRは、スーパーのチラシを見比べるような、ふだんの暮らしを忘れさせる。
神奈川県横須賀市の森武美さん(49)は11日、次女の綾乃さん(23)と2人でグッズを5万円分買った。
自宅では明かりをこまめに消す。夫や子には弁当をもたせる。500円玉は「ディズニーで使う用」に開いた口座に。「自宅はもうディズニー商品でいっぱいだけど、新商品なら買わずにはいられない」
バブル後の90年代、来園者は年1700万人前後で足踏みしたが、「シー」で2千万人台になり、この3月までの1年は2750万人。過去最多だ。使うお金も、過去最高だった前年を超す1万420円(入園券込み)との予想を公表している。ハウステンボス(長崎)の約8千円、サンリオピューロランド(東京)の約4500円を引き離す。
オリエンタルランドの上西京一郎社長(55)は「削ったお金を幸せが味わえるものに使う。そんな消費者の志向は明確だ」と話す。ただし、90%超のリピーターの財布のひもが緩むのは経営努力があってこそ。

「魔法の王国」デフレ知らず TDR開業30周年

この部分なんか、まるで低所得層がソーシャルゲームにのめり込む様子を紹介しているような印象を受けます。

もちろん、似通っている部分もあります。趣味の圧倒的大多数がそうであるように、お金を払っている人たちが何を得ているのか? は、他人には想像しがたいのが普通です。ディズニーに魅力を感じない人にとっては、どちらも「なんでそんな無意味なことにお金をつぎ込むのか」というのが、率直な感想であるはずです。

 

超一流コンテンツがひとり勝ちの要因

とは言え、逆に言えば、趣味とは基本的に他人には理解されないものです。当人が何かしらポジティブな影響を受けているのであれば、言うまでもなく、趣味そのものを否定するのはナンセンスでしょう。

東京ディズニーリゾートとソーシャルゲームの明確な違いは、コンテンツが一流かどうかです。ソーシャルゲームの圧倒的大多数は、クラシック・ゲームに比較して、質が低いと感じさせます。今、30代40代の社会人にとっては、過去の作り込まれたゲームたちの輝かしい記憶があるので、「なんであんな三流ゲームにお金と時間を無駄にするんだ」という思いが拭えません。

僕としても、その感覚はとてもよくわかります。ゲームそのものに否定的な意見もあるとは思いますが、特にソーシャルゲームが叩かれる大きな要因となるのは、コンテンツの質の低さだと考えています。

おそらく朝日新聞としては、悪意があるわけではないのだと思います。単に経営手法の面からディズニー好調の要因を紐解き、実際にその手法で購買行動を起こしている顧客がいると示しているわけです。

ただし一方で、経営面だけを切り取ってしまうと、重要な部分が抜け落ちてしまいます。コンテンツが超一流である、という事実です。ホスピタリティ、景観、ショーやパレードのエンターテイメント性やダンサーの質など、テーマパークとしては他の追随を許さないハイレベルを維持し続けています。

 

震災直後に実感した本物のエンターテイメント

僕は今でこそ、家族で年間パスポートを所持していて、大手メディアにディズニー記事を寄稿していますが、最初からディズニーを認めていたわけではありません。むしろ人混みが嫌なので、避けていたくらいです。妻と出会って徐々に行く回数が増え、オリエンタルランドの経営手法に興味を持ち、次第に東京ディズニーリゾートに注目するようになりました。

本当の意味でのファンになったのは、実は震災がきっかけでした。震災直後の日本社会の雰囲気を覚えているでしょうか。津波で壊滅する沿岸部の様子が、テレビで連日放映されていました。昨日までの日常がもろくも崩れ去った事実に、多くの人が、衝撃を受けていました。東北を支援しようと、多額の支援金が集まり、ボランティアが活動しました。

特に娯楽は自粛ムードで、桜が咲いても花見宴会さえ堂々とはやりにくい空気がありました。東京ディズニーリゾートは、施設自体への被害は軽微だったものの、周辺の生活・交通インフラの復旧を考慮し、約1ヶ月間閉園を迫られました。

当時の僕は、子供が2歳になったばかりで、妻が妊娠している状況でした。胎児は母体の影響を受けますし、2歳の娘もかなりナーバスになっていました。「自分にできることは、まず家族を守ることだ」と思い、積極的に娯楽を楽しもうと考えていました。

ディズニーランドが再開したと聞いて、さっそく家族で出かけました。歩いていて、滅多に人とすれ違わないくらいに空いていましたね。見慣れていたはずのショーやパレードを前に、知らず知らず涙腺が緩んだのを覚えています。ちょっとこれは衝撃的な体験でした。冷静な頭で「いや、これを見たら、誰も自粛なんて言えない」と考えていました。

人によって、ポイントは違うかもしれません。個人的には、ダンス&ミュージックが創り出すエンターテイメント空間と、ダンサーたちの笑顔が、クリティカルに響きました。ピリピリした社会情勢だったからこそ、「自分が求めているもの、欲しがっているものが、確かにここにあるんだ」と気がつけたのだと思います。

 

 

社会情勢が厳しくなればなるほど、本物だけが生き残る

オリエンタルランドには“いつわりなく夢や希望を与えられる、超一流コンテンツ”を抱えている自負がある、という前提の元に読むと、上西京一郎社長の言葉も、またひと味違って感じられるはずです。

――世の中は節約志向です。
「全体として、消費者がしっかり財布のひもを締めているのは間違いない。将来への不安もあるだろう。『アベノミクス』といっても、まだ、財布が重く厚くなっているわけではない。でも人間には、何かを買いたい気持ちがどこかにあるものだ。削るものは削る。でも、使いたいと思うものには、削った部分を投入してでも自分の幸せ感、満足感を達成する。そんな消費マインドが明確になってきているのではないか」

――いつごろからですか。
「そんな流れは、10年くらい前からあったように感じる。私どもの売り上げの一人当たり単価に表れてきたのはここ4、5年ぐらいではないか」

――節約志向は08年秋のリーマン・ショック後に強まったと言われます。そのころから、メリハリが出てきたということですか。
「そうだと思う。バブル経済が崩壊した後は、消費はしばらく(落ちないで)余韻を引きずっていた。リーマンの時は完全にがくっと落ちた。そこが大きな転機になったかもしれない」

――使う時は使うといっても、使う先に選ばれねばなりません。
「政府がいま、デフレをインフレに変える目標を立てているが、消費者のマインドは、すぐには変わらないだろう。我々は、選ばれ、来園してもらえる努力を続ける」
節約してでも幸福追求、明確に オリエンタルランド社長

この、選んでもらえるという自信。

震災直後の個人的体験を蒸し返すまでもなく、社会情勢が厳しくなればなるほど、本物だけが生き残る傾向は明確になります。

オリエンタルランドは、これだけ的確に現状を把握しているんですね。素晴らしい戦略眼。どんな世の中になっても、当面は東京ディズニーリゾートのひとり勝ちが続きそうです。

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