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317月

Disney / Pixar『インサイド・ヘッド』レビュー|物語の柔軟性を犠牲に生み出された、誰も見た経験がない新世界

試写で字幕版、プライベートで子どもたちと日本語吹き替え版を見ました。

個人的な満足度は、60〜70%。

鑑賞し終わって真っ先に思ったのは、『トイ・ストーリー』3作の偉大さで、『インサイド・ヘッド』には違った良さがあるけれど、つまるところ「私は良い鑑賞者ではなかった」、という結論になるんでしょうか。

 

推測可能なストーリーを、どう評価するか

作品情報にあるとおり、頭の中の司令部から、ヨロコビとカナシミが放り出されてしまうわけですが、もうこの時点で、司令部へ帰ることがメインストーリーだと、明確になります。

脳内を忠実に再現した世界を舞台にしている以上、それ以外の選択肢は、あり得ません。

しかも、帰路もはっきり提示されていて、これから起こるだろう障害も、早い段階で明確になります。

加えて言えば、障害が何回起きるかもわかるし、いよいよ司令部に到達できるタイミングがいつなのかも、簡単に推測できてしまいます。

すると、どんなにキャラクターが魅力的で、道中に驚きが満ち溢れていても、まどろっこしさが拭えない。

吹き替え版を一緒に鑑賞した妻は「カナシミにイライラした」と言っていました。

ストーリーが一本道で予測可能だからこそ、ウジウジした性格や、足を引っ張る行動が、“引き延ばし” のように感じてしまう。

本来は、カナシミのキャラクターを印象づけたり、カナシミの存在理由を深掘りする、重要な描写・エピソードたちです(その役割をきちんとこなすためには、違和感やストレスがあってはならない)。

 

ストーリーの柔軟性を犠牲に生まれた、まだ誰も見た経験がない新世界

『トイ・ストーリー』3作は、無類のストーリーを持つ、傑作映画です。

物語は、違和感なくよく作り込まれており、鑑賞者の多くが、キャラクターの個性を理解しながら、展開にのめり込んでいきます。

一度ならず、二度三度、いや何十回見返しても、「よくできている」と感心するしかありません。

物語には「型」があります。おもしろい形式は、決まっていて、長い文化史の中で探し尽くされています。

そんな歴史の中で見ても、お手本と言っていい傑作映画が、『トイ・ストーリー』3作です。

もし大衆小説を書きたい人がいたら、『トイ・ストーリー』の骨組みを丸々コピーして(もちろんまったく違うキャラクターで)書いてみてください。

描写力が備わっていて、キャラクター造形さえ間違えなければ、確実におもしろい小説になります。

それと比較してしまうと『インサイド・ヘッド』は……いや、物語の出来が『トイ・ストーリー』レベルでなくてもおもしろいく感じるピクサー映画はいくつもあるので、比較するのはお門違いなんでしょう。

ピクサーは『インサイド・ヘッド』で、正真正銘、今までに誰も見た経験がない世界を描写してみせました。

得るものがあれば、失うものもある。ストーリーが硬直的になってしまう制約と引き替えに、ピクサーらしいクリエイター魂を貫いたのかもしれません。

 

さすがピクサーと言える、人格形成や感情の動きの正確な描写

劇中で描こうとしていることそのものは、新時代に突入したディズニーの新テーマ「ありのままで」であり、とても共感できるものです。

『アナと雪の女王』、『ベイマックス』、実写『シンデレラ』と続くラインを、ピクサー・アニメーション・スタジオも(意図的ではないかもしれませんが)踏襲しました。

キャッチフレーズは「なぜ、“カナシミ”は必要なの…?」ですが、感情を排除または抑圧しようとすれば、どんな影響になるか、心理学や精神医学の専門書を読まずとも、誰にでも想像できます。

たとえば、お父さん、お母さん。子どもに「男なんだから泣くな」と、つい言っていませんか。

科学的に考えれば、こんな理不尽な理屈もないですよね。性別によって、感情抑圧への耐性が決まるわけではありません。

悲しい気持ちになったとき、人は何を求め、本当はどうしてほしいと欲しているのか。

『インサイド・ヘッド』は、そんな当たり前の事実を、これ以上ないくらいの美しい映像と、正確な描写で教えてくれる映画です。

85月

実写『シンデレラ』は子連れで観に行ったほうがいい、と断言する3つの理由

ディズニーメディアのディレクターとして、いちディズニーファンとして、そして何より6歳と3歳の子供の親として、断言します。

実写『シンデレラ』は、子連れで観に行くべきです。

 

映画として文句なしの傑作

はじめに、実写『シンデレラ』の映画としての評価をしておくと、これは文句なしの傑作です。

ディズニーのおとぎ話が好きだろうが、嫌いだろうが、そんなことはお構いなしに、「映画として優れた作品である」という、敢然たる事実があります。

リリー・ジェームズ(シンデレラ役の女優)の存在だけでも、映画館で105分を費やす価値があると感じる人がほとんどだと思います。

来日記者会見で、リリー・ジェームズ本人を見ました。彼女は「女優として」という前に、ひとりの人間として、知的で、ユーモアがあり、自分自身であるということを怖がらない(たとえば、照れも戸惑いも、ありのままに表現できる)、魅力的な女性でした。

監督ケネス・ブラナーは、シェイクスピア劇出身の俳優でもあります。王宮のシーンを描かせたら、ピカイチなんです。

私は(ディズニーに対し)「古典的(Classical)なシンデレラをつくりたい」と答えました。
伝統的であり、おとぎ話ではあるんだけれども視覚的に豪華な作品でもあって、キャラクターと演技がとても現代的な作品をつくりたい、と答えたんですね。

【前編】『シンデレラ』監督インタビュー「なぜ今“シンデレラ”を実写化するのか?」

インタビューで、監督本人も言っていましたが、たとえば最大の見せ場の一つである舞踏会のシーンなど、クラシカルで、素晴らしく豪華です。

映画館の大きなスクリーンで見る価値のある、掛け値なしの映像美と言えます。

 

実写『シンデレラ』を子連れで観に行くべき3つの理由

私には6歳と3歳の子どもがいます。きっと、同世代のお父さん、お母さんが気になるのが、

ディズニーのおとぎ話『シンデレラ』とはいえ、アニメーションではなく実写映画でしょう? 幼児や、小学校低学年の子どもと一緒に観に行けるかしら?

ということだと思うんです。

私は、心配しなくていい、という意見です。いや、むしろ、子どもを連れて観に行くべきだと思います。理由は3つです。

 

1. 同時上映の「アナ雪」新作短編がおもしろい

はなっから『シンデレラ』と無関係ですみませんが、同時上映が、子どもたちが大好き『アナ雪』の新作短編『アナと雪の女王 エルサのサプライズ』です。

本編の前に上映する、おまけのような短編なので、本当に短いです。

が、流石は乗りに乗っているウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ。

映画館を出てから、子どもたちに、

「映画はどうだった?」

と聞くと、1時間45分の『シンデレラ』本編を見終わった直後にもかかわらず、

「おもしろかった! アナの誕生日のお話が!!」と答が返ってくるくらいには、むちゃくちゃおもしろいです。

人気キャラが総登場するうえに、各キャラクターの個性が生きている!

『Frozen 2』(アナ雪2)の製作が決まっていますが、エルサが作った氷の城が残っていたり、とある主要キャラの現状が垣間見られたり、次回作に向けていろいろ想像をたくましくすることもできます。

 

2. 子どもたちが大人になったときに、周囲に自慢できる

たとえば、1950年公開のアニメーション『シンデレラ』を、リアルタイムに映画館で観ていたとしたら、ちょっとした自慢話にできます。

古典『シンデレラ』は、ディズニー・ラブストーリーの原点であり、ディズニーのDNAとも言える作品だからです。

今回の実写『シンデレラ』が傑作である、という事実は、冒頭でさんざん語りました。

単に優れた映画であるだけでなく、ディズニーの新しい歴史を作る作品になった、と私は思っています。

【実写映画『シンデレラ』レビュー】パーフェクト。今後「ディズニーのシンデレラ」と言えばこの作品を指すようになる(1/3) – D*MANIA
ケネス・ブラナー監督インタビューで、とても興味深いコメントがありました。

ディズニーは、新しく、ポジティブな「始まり」の機運を感じていて、アニメーションを実写化していく創造的なプランの先駆けとして、『シンデレラ』を考えていたようです。

【前編】『シンデレラ』監督インタビュー「なぜ今“シンデレラ”を実写化するのか?」

ジョン・ラセターをトップに迎え、『塔の上のラプンツェル』で復活を果たしたウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオは、『シュガー・ラッシュ』『アナと雪の女王』『ベイマックス』と、立て続けに、世界を感動の渦に巻き込む作品を世に放ちました。

アニメーション部門は、数十年後に「黄金期」と呼ばれるに違いない、奇跡的な成果を出し続けています。

一方の実写『シンデレラ』は、ケネス・ブラナーの言葉を信じれば、ディズニー実写部門のマイルストーンとなるべく製作された作品なんです。

 

3. 子どもたちに見せたい、と思える作品に仕上がっている

そして実際、実写『シンデレラ』は、ディズニー実写部門が “新時代” を宣言するに値する作品です。

実は私は、古典『シンデレラ』をはじめ、ディズニーの古いおとぎ話を、子どもたちに積極的に見せたいと思った経験がありません。

ところが、試写で実写『シンデレラ』を観て、これは絶対に子どもたちに見せなければ!と直感したんです。

なぜなら、実写『シンデレラ』は、「堪え忍んでいたら、幸運や魔法が助けてくれた」という古くさい物語ではなかったから。

最愛の人々に、心から愛されて育ったシンデレラは、不運や、理不尽にも負けず、世界を広げていける……というお話だった。

ありのままの自分自身を受け入れ、信頼すること(つまり、自己肯定感)こそ、本当の魔法。

これはもう、現代社会を豊かに生きるための、ほとんど唯一の真理と言ってもいいわけです。

 

現代の子どもたちと、その親のために作られた、ディズニーのおとぎ話

古典『シンデレラ』が公開されたのは、第二次世界大戦の爪痕が残る1950年。シンデレラの人物像には、時代背景が色濃く反映されていたといいます。

私たち現代の親の感覚からすると、アニメーションの『シンデレラ』が古くさく感じられて当然なんです。

実写『シンデレラ』は、現代の子どもたちと、その親のために作られた、ディズニーのおとぎ話。

きっと「子どもと観に行って良かった」と思えるはずです。

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