森喜朗のパラリンピック発言を問題視する人は、自らの差別意識に気づいていない


森喜朗・元総理/東京五輪組織委員会会長の、パラリンピックに関する発言が、差別的であると批判されているようです。

森氏そのものの是非、好き嫌いはともかく、私はむしろ、批判者の側にひそむ差別意識のほうを話題にしたいと感じました。

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森喜朗です。少し寝不足ですが私も。一昨昨日ですか、ソチから帰ってきたばかりでもあります。ソチというのは、とても良いとこです。しかし、足の回りが非常に悪いんですね。ロシアっていう国は、サービス精神がよくない国なんですね。もともと長い間社会主義国ですから。来たけりゃ来いよという感じです。モスクワから飛行機で2時間もちょっとすればソチへ行くんですけど、モスクワに着いても、モスクワからの接続便がないんですね。サンクトペテルブルク行ったり、あるいはいくつかの都市を通って行ったり、なかなかその日のうちに着かないんですね。計画的にわざと時間を接続させてないんじゃないかなと。そこに皆で泊まれば、そちらでお金が落ちますから。そうしてんじゃないかなということを思うぐらい、連絡の便がとても悪いですね。悪いんです。まあ、うまく乗り合わせても、27時間ぐらいかかりますね。東京からソチに着くまで。

私は5日の日に行きまして、開会式臨んで、いくつかの会議をやって。何しろオリンピックの役員になって、新参者でありますので、ご挨拶が多かったんですが、あちらこちらみなさんにご挨拶をして帰ってきました。もう一遍、またこれ3月に入りますと、パラリンピックがあります。このほうも行けという命令なんです。オリンピックだけ行ってますと、組織委員会の会長は健常者の競技だけ行ってて、障害者のほうをおろそかにしてるんだと。こういう風に言われるといけませんので。ソチへまた行けと言うんですね。今また、その日程組んでおるんですけど、「ああ、また20何時間以上も時間かけて行くのかな」と思うと、ほんとに暗いですね。

森喜朗 元総理・東京五輪組織委員会会長の発言 書き起し

 

森喜朗はロシアの交通の便の悪さを嘆いている

全文を読めばわかるとおり、「あまりにロシア国内の交通の便が悪く、時間がかかり過ぎるので、もう一度行くのは億劫だ」というのが、批判されているパラリンピック発言の主旨です。

東京五輪組織委員会会長の立場から言って、他国に対してネガティブな発言をしたり、五輪に行くのを面倒がったりするのはいかがなものか、という指摘はあるでしょうが、今回の記事の本旨からは外れるので、脇においておきます。

多くの人が「差別的だ」と批判しているのは、次の一節です。

もう一遍、またこれ3月に入りますと、パラリンピックがあります。このほうも行けという命令なんです。オリンピックだけ行ってますと、組織委員会の会長は健常者の競技だけ行ってて、障害者のほうをおろそかにしてるんだと。こういう風に言われるといけませんので。ソチへまた行けと言うんですね。今また、その日程組んでおるんですけど、「ああ、また20何時間以上も時間かけて行くのかな」と思うと、ほんとに暗いですね。

 

差別的だと判断しているのは、批判者の差別意識である

森喜朗氏が、障害者に対して、どんな価値観を持っているのかは、ご本人が話さなければわかりません。少なくとも、この書き起こしを見る限りでは、

オリンピックだけ行ってますと、組織委員会の会長は健常者の競技だけ行ってて、障害者のほうをおろそかにしてるんだと。こういう風に言われるといけませんので。ソチへまた行けと言うんですね。

森喜朗氏自身の意見ではなく、そういうふうに誰かに言われた、あるいは他人の手によって予定が組まれた、という状況しかわかりません。もちろん、自分の考えを、他人の責任に転嫁した可能性もあるかもしれないですが、断定できる要素はどこにもありません。

にもかかわらず、これを森喜朗の人間的資質に基づく失言である、と歪曲して捉える方が少なからずいらっしゃいます。

なぜ歪曲してしまうのか。

何しろ、「神の国」発言をきっかけに総理を辞職した方ですから、先入観は一つの理由としてあるでしょう。あいつなら差別的な発言もするだろう、と。

そしてもう一つ無視できないのは、パラリンピック発言を批判する人の内側に、無意識に存在している、障害者への差別意識です。

 

特別扱いする限り、障害者差別はなくならない

「パラリンピック発言を批判する人は、パラリンピックが障害者の祭典であるからこそ、批判した」という見解に、異論はないはずです。

しかし、これは変ではないでしょうか。

たとえば、順番が逆で、パラリンピックが先に開催されていたらどうでしょうか。次にオリンピックに行く予定になっているんだけれども、ロシアの交通の便が悪いので、億劫だ、という発言だったとしたら。

差別発言だと問題にする人はいなかったはずです(前述のとおり、東京五輪組織委員会会長の立場から言って、五輪に行くのを面倒がるのはとんでもない、という批判はあるでしょうが)。

なぜ、障害者の祭典であるパラリンピックは、特別な配慮がされなければいけないのでしょうか?

“特別だ” と考えている時点で、そこには “障害者は別である” という意識が、必ず存在しています。

私たちが「障害者には特別な配慮をしなければいけない」と考えている限り、日本社会から障害者差別がなくなることはありません(もちろん、福祉の制度や設備を充実させるべき、という見解に異論はありません。ただ日本は、お金でできることに偏りすぎている)。

たとえば、会社でも同じでしょう。新人だから教えてあげて、ミスしても大目に見てあげて、と特別扱いされているうちは、なんだか同じ職場で働く本当の仲間になれた気がしない。

 

日本は「障害者は私たちとは違う」という認識が自然に育つ国

ちょうど先日、

車いすを見て「手伝えない理由」を探す私たち

という記事を書いたところでした。

小学校の特殊学級(特別支援学級)をはじめ、ハンディを持つ人を一か所に集め、特別に扱う仕組みだけしか存在しないような日本社会では、「あ、彼らは自分たちとは違うんだ」という認識が、こどもの頃から自然に育っていきます。

結果として私たちは、「車いすを押すのは駅員さんの仕事であって、私たちの仕事じゃない。」と、欧米諸国からみれば、野蛮としか言いようがない、ガラパゴス的な福祉の価値観を、普通だと思い込むようになっています。

私は、差別してはいけない、差別的な人は悪い、と良い子ぶって批判するつもりはありません。私自身、差別意識を自然に持ちながら育った一人です。

パラリンピック発言の批判者を否定したいのではなく、「社会の仕組みそのものが、「障害者は別」という意識を自然に育み、マイノリティが排除される結果になってしまっているんじゃないですか?」と問いかけたいと思って、この記事を書きました。

前段の記事でも引用しているんですが、「ピープルデザイン研究所」須藤シンジさんの言葉をもう一度、紹介します。

駅のホームで、車いすの人を、駅員さんが3人がかりで電車に乗せている風景を、ご覧になったことがあると思います。

僕、いいことだと思っていたんです。

ところが、あんなことをやっている国は、実は日本ぐらいなんですよね。

車いすの人がいたら、車いすを押すのは駅員さんの仕事であって、私たちの仕事じゃない。私がなんかやっちゃって、クレームでも受けたらどうしようとか、頭が働いちゃうじゃないですか。あるいは、白い杖をついた人が、交差点にいる。声を掛けたいんだけど、ちょっとどうしようかな、とモジモジ感があるじゃないですか。

(中略)

結論を言えば、困っている人がいたら、手伝えばいいんですよ。でも、その一言が出ない。出ない理由を探し始めるんです。

※『こどもみらいdesignフォーラム 2014』須藤シンジさんによるオープニングトークより

 

マイノリティを排除しない

解決するには、障害者を始めとするマイノリティを、どこかに押し込めようとしないことです。

身の回りにいない、目の前にいないからこそ、「彼らは私たちとは違う」と感じ、特別な配慮が必要だという強迫観念に晒されます。

自分では差別意識を持っていないと思っていても、気がつかないうちにマイノリティを排除してしまいます。いつまでも差別はなくなりません。

たとえば、こどもみらいdesignフォーラム 2014で、矢野デイビッドさんが言っていたのですが、ガーナでは、自然に助け合い、面倒を見られる者が面倒を見るので、こどもたちが集団でいると、障害児が混じっていても、しばらくは気づかないほどだそうです。

日本ではどうでしょうか。障害児がいて、存在に気づかないなど、まずあり得ません。きっと彼らは、大勢の中にいても、浮いて見えてしまうのではないでしょうか。

 

“誰でも一緒にいていい社会” がいい

なぜ、福祉関係の活動をしているわけでもない私が、これを声に出して言いたいのか。

答はシンプルで、誰でも一緒にいていい社会のほうが、居心地のいい社会だと思うからです。

マイノリティとは、なにも、障害や、セクシュアリティや、皮膚の色だけではないんです。

趣味や、教育に対する考え方や、働き方の価値観。自分の考え方や、価値観が、ちょっと他人と違うからと言って、生きにくくなってしまうのは、嫌だと思いませんか?

多様性のある社会。自分らしく生きられる社会。障害者に対する意識も、そこに繋がる一つの要素だと考えています。

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